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｢そういえば……練習試合、天宮は出ないのか？ お前がいたら百人力なのに｣
｢うーん……｣
風丸の質問はごく当たり前の疑問だった。なんと説明したものかとAが唸っていると、円堂がだめ！ と割り込んでくる。
｢だめって、なんで｣
｢Aはドクターストップかかってるから、試合には出られないんだ｣
円堂の答えに、風丸は目をひん剥いた。小学生時代の病気の後遺症がまだ残っているのだという。
さっき必殺シュートをぶちかましていなかったか、この天使様。そもそも、ドクターストップがかかっているのにどうしてサッカーをやろうという思考になるんだ。
｢ドクターストップ！？ シュート打って大丈夫なのか？｣
｢まあシュートくらいなら｣
自分の限界は自分がわかってるよ、と呑気に欠伸をするAに、風丸は今まで彼女に抱いていた憧憬のような先入観がガラガラ崩れ落ちる気がした。
噂があまりにも完璧すぎたから余程しっかりした人なのだろうと思っていたけれど、割と適当でぼんやりしたところがある。
素直で優しくて誠実で気配りができて、本物の天使と見紛うほど素晴らしい人柄だというのに、なんというかギャップがすごい。
｢情緒が忙しいね、風丸｣
｢お前のせいだよ！｣
｢え〜｣
｢え〜じゃない。あと、暗いし家まで送るから｣
｢大丈夫だよ｣
｢俺が大丈夫じゃないんだ｣
｢ん〜じゃあお願いします。ありがとね｣
風丸は幼なじみみたいに心配症だとAが言う。こんなに危なっかしければその幼なじみとやらが彼女に対して過保護になるのも仕方がない。初対面の自分でもこんなに心配になるのだから。
今日の様子を見る限り彼女の幼なじみはサッカー部員ではないだろうから、サッカー部にいる間だけでもしっかり様子を見ておかなければ。
風丸の決意を他所に、Aはおなかすいたねと無邪気に笑った。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
