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豪炎寺家での居候生活が始まった次の日。
彼が正式に雷門中に転入するのは明日らしいので、Aはひとりで学校に来ていた。
「A、おはよう」
「秋、おはよー」
可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれたのは、一年生のときから一緒に過ごしていることが多い友達の秋だ。彼女は女子力の塊で、優しくて可愛い。お嫁さんにできる男は果報者だと思う。
「Aおはよう!」
「おはよ、円堂。今日も元気だね」
「おう!」
太陽のような笑顔を浮かべているのは、円堂守。雷門中サッカー部のキャプテンである。ちなみに、秋はマネージャー。
現在はやめてしまっているものの、一応サッカーを経験した身として気にかけていたら、いつの間にかAまでサッカー部の一員のように扱われている。別に入部した覚えはないが、顧問の冬海が仕事をせずまったく役に立たないので、ちょっとしたサポートくらいはと甘んじて受け入れている次第だ。
今のサッカー部員はやる気の欠片もないから、円堂のキーパー練習くらいでしか役に立たないけれど。
あ、そういえば。
「円堂ごめん、今日は練習に付き合えそうにないの」
「そっか、わかった! 何かあるのか?」
「昨日引っ越したから、色々やることがあって」
「引っ越し?」
「うん。パパとママが海外出張に行っちゃったから、その間幼なじみの家にいるんだ」
「へえ、お前幼なじみとかいたんだな!」
他愛ない話をしていると、担任がやってきてHRが始まる。
ふと窓際を見ると、昨日まではなかった空いている座席が目にとまった。これはもしかして。
こんな時期に転校してくる生徒がそう何人もいるわけではないだろう。明日からは、この教室に我が幼なじみもいるのかもしれない。
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作者名:おひめ | 作成日時:2022年7月14日 17時