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｢ぐっもーにん修也。さわやかな朝だね｣
｢……A？｣
ひらひらと手を振ると、幼なじみの豪炎寺はAの名前を確かめるように呼んだ。Aだよ、と笑いかけてダイニングの椅子から立ち上がる。
｢修也の新しい家綺麗〜｣
｢そうだな。ところで、なんでお前が家にいるんだ｣
｢一緒に住むから｣
｢は？｣
｢一緒に住むから｣
豪炎寺が固まってしまった。そんなに衝撃的なことだっただろうか。我が両親が海外出張に行くことは言ったはずなのだが。
首を傾げていると、石像と化していた豪炎寺が復活する。
｢おじさんたちの出張について行ったのかと思った｣
｢んーそうしてもよかったんだけど、わたし別に考古学とか歴史学とか興味ないし｣
｢……おばさんはともかく、おじさんは泣いたんじゃないか｣
｢よくわかったね……エスパー？｣
｢普段の溺愛ぶりを見ていればわかる｣
娘に絶対的な愛を注ぐ父親はAと離れ離れになりたくないと駄々をこねていたが、母親に尻をしばかれ渋々旅立った。
あの暑苦しい愛情表現はたまに鬱陶しくなることもなくはないけれど、愛情深い両親がAは大好きだ。
飛行機に乗る瞬間まで心配そうに名残惜しそうにこちらを何度も振り向いていた両親の残像を脳裏から消し去る。
｢ということで、しばらくよろしくね｣
｢こちらこそ｣
｢学校も同じなんてうれしい！一緒に登校しようー｣
｢そうだな｣
嫌がられなくてよかった。中学生は多感なお年頃だから、異性の幼なじみなんて絶交されても仕方がないものだと思っていたけれど、穏やかな微笑みを向けてくる豪炎寺は昔と変わらず優しさと思慮深さの塊である。
｢あ、お世話になりますの証に料理でもする？｣
｢お前はキッチンに立つな｣
解せぬ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
