【utit】甘く甘く溶けるまで (ページ11)

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あらき × 料理ページ11

あらき side

視線を感じる。いやまぁ、視線を送ってくるのは飼ってる猫か……Aしかいない。そして猫は今寝ているみたいだしそうなれば考えられるのは一人だけ。

『どしたんっすか』

そう言って鍋の中身をかき混ぜる手は止めずに顔をあげる、とアイランドキッチンのカウンターに頬杖をついて穴が開くんじゃないかっていう勢いで俺を見つめるA。

「一緒にお料理したいです。」

『えぇでももう後用意するのサラダぐらいで終わりっすよ？』

それにA、料理するっけ？そういうと子どもみたいに頬を膨らませてだから教えてくださいよ。なんて言う。そう、俺の彼女はあまり料理はしない。正確に言うと俺がさせなくなった。はっきり言うと不器用な彼女は料理中ヒヤヒヤする場面がいくつもある。から、やめさせました。
ねえお願い、なんて可愛い彼女にお願いされて断れる男がどこに居るだろうか。

『はぁ。ほんとは嫌なんっすけどねぇ。とりあえず手ェ洗って』

やったー！とぴょこぴょこしながら手を洗う。
とりあえずはレタスのカットなのだがレタスを切るのはそこそこ難しいので手で千切るのをお願いし、ちぎったものをボウルに盛り付けてもらう。クルトンを乗せてあらかじめ用意していたゆで卵を切ろうとした時、やりたい！と言ってきた。まぁ卵くらいならいいか。と思い場所を明け渡す。

『ちゃんと猫の手してくださいね』

「わかってる！」

そのまま俺が隣について見てるなら大丈夫だろうとオレンジもカットし、夕食が完成した。

『「いただきます」』

その日のメニューはホワイトシチューとガーリックトースト、鶏むね肉のカレーグリル、サラダ、オレンジ、とこんな感じだった。どの味付けも絶妙で我ながら美味しいと自負した。

「あのね、あらきさんに任せっぱなしもやだから、たまぁにでいいから私にもお手伝いさせて欲しいな」

突然そう言った彼女に俺は目をパチクリとさせる。なぜそんな風に突然言うのか分からないと顔に出す俺になんにもしない彼女嫌でしょう？と不安気な表情を浮かべるA。何を言っているんだろう。

『Aさん？俺はね、あ〜あれ食べたいって言ってたなあとか考えながら献立立てたり、Aが美味しそうな顔して食べてくれる姿を想像しながら料理するのが好きなんですよ』

だからそんなこと考えもしませんよ。というとそっかぁと表情が和らぎ美味しそうにチキンを頬張った。
こんな何気ない日常が幸せだと思った。

fin.