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｢……隣、よろしいかな｣
｢あぁ、構わないさ｣
男にそっと声をかけると、彼はゆっくりと顔を上げこちらを見つめてきた。
｢！｣
━━━━━なんだ、この男は。
男の顔を見た瞬間、深澤は奇妙な感覚に襲われた。
初めて会ったはずなのに、男に対し何故か既視感を感じたのだ。
男の顔は思っていたよりもかなり若く、黄金色に輝く右眼からは何か不思議な力を感じる。恐らく左眼は失明したのだろうか、包帯でぐるりと巻かれている。
｢どうした若人、隣に座るのだろう？｣
｢あ、あぁ｣
飛びかけていた意識をなんとか手繰り寄せ、深澤は男の隣の席へと腰掛ける。そして、水と軽食としてソーセージを注文する。
｢さすがに職務中だから酒は飲まないんだな｣
｢職務中でなくても、私は酒は飲みません｣
｢はは、そうかそうか。それより、お前さんは俺になにか聞きたいことでもあるのだろう？｣
そう言いながら、男は静かに笑う。まるでこちらの意志を見抜くかのように黄金の瞳と視線がかち合う。
｢……なぜ、分かったのですか？｣
｢長いこと色んなヤツらと話してたらな、嫌でもわかるさ。んで？俺からどんな話を聞きたいんだ？砂漠にある幻のオアシスの話か？それとも日のいづる国で起きた悪霊騒ぎの話か？｣
｢いや、そうではなくて……その、にわかに信じ難いお話だとは存じておりますが……800年前に勃発した、人魚乱獲事件をご存じですか？｣
｢……人魚、か？｣
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作者名：アマノ | 作成日時：2020年8月1日 9時
