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まず、彼の何がそんなにも好きなのかと聞かれれば、もうそれは正直に答えよう。
顔である。
何よりもまず顔が好きだ。
あれは一目惚れだったよ間違いなく。
アメトリンのような髪をなびかせる彼を今日も見つめては、ため息をひとつ吐き出した。
「 今日もかっこいいですね、先輩 .... 」
もうこんなの100人見れば90人は振り返るよ。
だってその90人は私ですから。
流石に盛った。
こんな例えをするくらいには好みだった事は伝わって欲しい。
SNSなんてものは便利で少し調べれば出てくる煌びやかな彼らの写真。
フェニックスワンダーランドでショーしてるんだって。
それがもうかっこいいのなんの。
プロが撮ってるの?ってハイレベルの写真ですよ。
「 そんな画面に向かって話しかけるより本人に直接声かけた方が良いんじゃねーの 」
「 簡単に言えたら困らないよ。
言えないからこうやって画面の中の先輩に向かって愛を囁いてるの。わかる? 」
分かるわけねーだろとでも言いたげな目の前の彼。
そう、私が眺めていたのは登校中の先輩でもなんでもなく画面の中に収まっている先輩の写真。
これは合法です。
許可を得て撮って貰ったので。
羨ましいだろうそうだろう。
先輩と面識が全くないわけではないし、これでも私は風紀委員なので持ち物検査だとかで何かと縁があるのだ。
「 堂々と話しかけたら良いと思うけどな俺は。
初対面でも無いし普通に話せるくらいの仲だろ 」
「 そ、れはそうだけど .... 」
口ごもってしまう私に呆れた様子で隣の席に腰を下ろす彼。
紹介が遅くなってしまったが先程から話してるのはクラスメイトの東雲彰人くん。
そう、これは私が先輩の日常にどうにかして少しでも入りたいという願望を周りの人を巻き込みながら叶えるであろうお話である。
暖かい目で見守って欲しいと思う。
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作者名:水瀬 | 作成日時:2023年1月22日 10時