第1章 - 9話 ページ9
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私は男たちにバレずに家を離れたあと、彼を抱えてしばらく走った。
いくつかの山を越え、脚が限界になる頃に野生のピコを見つけた。彼が手懐けてくれたため、今はピコに乗って草原を走っている。
夜空は憎らしいほど晴れ渡っていて、星は煌めき、月光は夜の闇を照らしてくれている。
私の心とは真逆な、明るい夜だ。
ラティを失った喪失感に襲われ、涙が出てきた。
前に座っている少年を抱きしめこうべを垂れ、声を押し殺して泣く。
しばらくそのままでいると、彼が口を開いた。
「なあ、どうしてオレを助けたんだ？」
彼は前を見たままで話す。
私が何も答えないでいると、そのまま話を続けた。
「…オレはクルタ族だ。
2か月前に、外の世界に飛び出して、それから冒険を続けている。
毎日新しいものに出会って、もちろん大変なこともあったけど、その全部が楽しかった。
色々な街を転々して、今日、あの街に着いたんだ。
そしてキャラバンの店を見て回っていた時、2日前の新聞を拾って
…初めてオレの家族が殺されたことを知った。
最初はよくわからなくて、何かの間違いじゃないのかと思って街の人に聞いたけど、新聞とそっくり同じことを言う。
…混乱したし、ただただ悲しくて、気付いたら泣いていた。」
あの時だ。私が林檎を食べていたあの時。
彼は暗い口調で続ける。
「気づいたら周りに大人たちがいて、オレの目を見て何か言ってたときに
…ああ、オレの家族も、友達も、この目を持っているというだけでこうやって殺されていったのか、って思った。」
泣いているのだろう。話す声の途中途中で嗚咽が聞こえる。
「全てを諦めかけたけど、オレは友達との約束があったから、逃げなきゃと思って走った。
そしたらお前とぶつかって、逃げようと思ったけど、体が動かなくて。
だからその時に、もう終わりだ、って思った。
オレも捕まえられて死ぬのか、って。
その後のことは覚えていない。
…でもお前は、オレを助けてくれた。
燃えてる家を見ても、オレを生かそうとした。
だけど、あの人は、お前の大切な人だったんだろ。
お前はオレと何も関係はないし、あの人だってそうだ。
あの人が殺されてしまった時、お前は泣いた、けど、すぐオレを逃がすために走ってくれた。」
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零落*・reira(プロフ) - カルタさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても励みになります…！ (2020年2月16日 15時) (
レス) id: 5e63a1d1e7 (このIDを非表示/違反報告)
カルタ(プロフ) - めっっっちゃ面白いです！合格おめでとうございます！更新楽しみにしています！ (2020年2月16日 14時) (レス) id: 132cc7b19e (このIDを非表示/違反報告)
白餡(プロフ) - パパっと読んでみましたが、描写も結構きっちりとしていて面白かったです。更新頑張ってください (2019年2月16日 23時) (レス) id: 81568ffd32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零落 | 作成日時：2019年2月14日 23時
