プロローグ ページ1
その部屋には光が灯されている筈だ。しかし、否応無く感じる薄暗さ。
それは【魔族】という者達が住まう場である事が原因か、それとも別か。はたまた両方か。
今はそんな些末など放棄する事を悩まずに選ぶであろう、重要な話が行われている。
──人の王、【勇者】アレクシス・
──魔族の王、【魔王】アイン・シュバルツ。
敵同士である彼らが一堂に集まる、二度は無いであろう機会──。
扉の外で警備を行う兵達の表情に余裕は伺えない。
それ程までに、両者の風格は尋常でない。
「……さて、先ずは応じてくれた事に感謝しよう」
「応じない理由がないだろう。……私も、これは望んでおらぬ故」
「くはッ、それもそうだな──さぁ、始めようではないか」
【魔王】、アイン・シュバルツ。
闇を連想させる深い黒髪に、思わず目を奪われてしまう魅惑的な紅い瞳。
その瞳を細め、余裕さえ漂わせながらアインは小さく笑みを浮かべる。
【勇者】、アレクシス・
角度によっては白にも見える長い銀色の髪。まるで青空の様な鮮やかな水晶。
普段は口元に浮かぶ笑みを消し、真剣にアレクシスはそこに居る。
「……嗚呼、始めよう」
アインの言葉に、アレクシスは静かに応ずる。
それを視界に入れ、はっきりと笑みを浮かべて【魔王】は宣言した。
「今宵は【休戦協定】──其の前座。精々厳かに、然し堂々と往こうではないか」
──そして、【勇者】と【魔王】の話し合いが始まった。
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作者名:花音 | 作成日時:2020年6月14日 23時