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「…………え?」
「もう、何回も言わせないでくださいよ……でも何回でも、伝わるまで言う。大好き」
ぎゅ、と音がつきそうなとほどに腕に力を込める王子様。
一方私は、彼の言葉を咀嚼すらできない。
「本当に、本当ですか」
「……期待しちゃうからそういう反応しないで」
彼の表情は窺えなくても 少なくとも声色は本気だ。
それは長年仕えてきた私が保証できる。
「ずっと、ずっと好き。結婚したいし僕のものにしちゃいたい。誰の目にも触れさせたくない」
最後の方は若干思考が危ない感じもするが、やはりそれほど本気ということなのか。
私は彼のことは好きではない。
断じて、好きではないのだ。
断じて なんて言葉を選んでいる時点で相当危ういのだが。
そんな思考に蓋をして溢れないようにするのは無意識だろう。
「____Aが不安がってるって聞いて、申し訳なくなっちゃって。僕なりに匂わせたりしてたんですけど……」
彼はゆっくりと私から離れながら事の発端を話し始めた。
「思い返すと、Aに不安にさせるようなことばっかりしちゃったなーって」
一応本人に自覚はあったらしいので、私も溜飲が下がった。
「そう、だからその謝罪も兼ねて来たんだけど……
好き。他のなにを捨てても、Aだけはほしい」
改めて、しっかり目を見てそう伝えられては俯いてなどいられず、彼の目をしっかり見つめると、彼は優しく微笑んだ。
「____だから、君が僕のことを"完全に"拒絶するまでは積極的に行きますね?2番手に恋なんてないですから」
完全に、という言葉に少し引っかかった。
「私のことを……その、襲いかけたとき、私は拒絶した____」
「なに言ってるんですか、あんなの拒絶のうちに入りませんって。本当に嫌だったらもっと抵抗できたでしょ?」
独自の判定基準で私が完全に拒絶してないことを語り出す王子様。
その基準だといつか罪を犯しそう。
「は、反省してませんね……?」
「してますよ。悪いことしちゃったなーって。でも後悔はしていません」
どこか晴れやかな顔で王子様は答え、私はというと生気の抜けきった顔で彼を見つめるしかなかった。
「____はぁ、自分で『2番手に恋なんてない』って言っておきながら僕は今6番手ですよね」
「そんなこと……ありますね」
言うと、彼は圧のある目で私を見つめ返した。
そんな私も力を込めて見返すと、どちらが先か お互い苦笑を堪えきれなかったのであった。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時