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生まれてこのかた、私は恋愛的な意味で人を好きになったことがない。
だから恋というものが分からないし、そんなの本の中でしかないものだと思っていた。
……私のこの感情がなんなのかも、無知な私は分からない。
____そんな私の悩みを遮るように、ドアが控えめな音を立てて開いた。
「…………起きていたんですね」
「う、ぇ……?!」
ドアから顔をのぞかせるのは正真正銘王子様であり、今私がこの世で最も会いたくない人物だった。
なぜ来たのか、疑問が渦巻いていると、
「安心してください、別になにかしようって来たわけではないので」
私の気持ちを察したのか 手を小さく挙げてなにもないことを証明した。
すると、そのままドアの向こうから私の部屋の中へと足を進めていた。
「ま、待ってください」
「なにか、見られたらまずいものでもあるんですか?」
お得意の冗談かと思い 王子様の顔を見ると 至って普通。
変なところで真面目なところを発揮するから 私としては本当にやめてほしい所存だ。
「そんなものはないですけど……」
とにかく、今は私に近づかないでほしい。
でもそんなことを口に出せるはずもなく、ただ首を横に振ることしかできない。
「ふぅん。……僕も事情があるので、とりあえず入らせてください」
「む、無理です、私にも事情があるんです」
無理やり入ってこようとする王子様。
……向こうの事情だけで通されてはたまったもんじゃない。
王子様の事情や都合とやらは知らない。
今は絶対に王子様と話したくなかったが、
「いいから」
と普通に部屋に入ってきた。
咄嗟に後ずさる。
……昨日の朝のデジャヴだ。
「____言うつもり、なかったんですけどね」
部屋に入ってきて、すぐにそんなことを言われ、思わずたじろいでしまう。
そんな私の様子も無視し、彼は続けた。
「言わなきゃいけない、今、伝えなくちゃ、いけないことがあるんです」
文節ごとに区切り、やけに切羽詰まった様でそう訴えてくる王子様。
彼の瞳は至って真面目、真っ直ぐで、見る者の視線を全て目に集めるほどに 覚悟や熱意のこもった瞳だ。
先刻の王子様の部屋に行ったときとのギャップに、喉が詰まる。
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虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» こちらのほうでもコメントありがとうございます(T T) 以前もらった泡糖さんのコメントが本当に嬉しく、今でも活力になっているので またコメントくださって嬉しいです💕 これからも更新頑張ります! (2022年3月4日 21時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - 更新ありがとうございます!今回も読んでいて楽しかったです! (2022年3月4日 21時) (レス) id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん 本当にいつもコメントありがとうございます✨ 大丈夫ですよ!笑 あれは完全にゴキブリを意識してます、気づいていただけて嬉しいです……笑 (2022年2月10日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - カサカサ…でゴキブリだと思ってしまった私は末期ですね(遠い目) (2022年2月10日 0時) (レス) @page25 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん いつもありがとうございます!! 切り方もお誉めもいただき光栄です……ありがとうございます(T T) 今後の展開に乞うご期待です!笑 (2022年1月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2022年1月13日 18時