...ちょっと待てよ？ ページ34
兄者 side
夜遅くまでレース頑張ってしまったせいか、目が覚めたら昼だった。
6〜7時間寝れば自然に起きられるはずなんだけどなぁ...疲れてたのかな、俺。
そんなことを考えながら部屋を出て、洗面所で顔を洗う。
普段は上げている髪の毛も寝起きのせいでぼさぼさだ。今日は特に出掛ける用事もないので、ワックスはつけずにサッと櫛で梳くだけにしておく。
とりあえず眠気覚ましにコーヒーでも飲むかな...とキッチンへ続くリビングへ入ると、何やらいい匂いがする。
ひょいとキッチンを覗き込むとAが何か作っている。俺には気付いていないようだ。
ほぅ...炒め物か。ちょうど腹も空いているし、出来たら少しもらお。
棚ぼた的な展開を期待してダイニングテーブルでスマホを弄って待っていると、思っていたよりも早くAがやって来た。どうやら作り終えたようだ。
俺の存在に気付くと怪訝な顔をする。
『ってなんで当たり前のように座ってるんです？』
兄｢コーヒー淹れに来たら美味そうな匂いしたから｣
『匂いにつられるって野生動物ですか？』
兄｢なんだとぅ｣
くだらない会話が弾む。俺もこいつも、随分打ち解けてきたように思う。初日なんか俺敵意剥き出しだったろ...。
初めを思い出して苦笑いしていると、Aが俺をじっと見つめていることに気付いた。なんか変なこと言っちまったかと思案したその時、小さく一言。
『罪ですねぇ...』
兄｢何が？｣
『いえ、別に』
どういうことだと思ったが、はぐらかされてしまう。
ふいっと俺から視線を外すとそのままキッチンに引っ込んでしまった。
...えぇ、俺なんかした？
しかし、すぐにキッチンから出てくると俺の前にコトリとマグカップを置き、『いただきます』とさっさと食べ始めてしまった。
注がれてるのは湯気の立つブラックコーヒー。ご丁寧に箸も置かれている。
兄｢あれ、俺も食っていいの？つーかコーヒーまで｣
『あ、いらないなら箸戻しといてくださいね。ていうかコーヒー淹れに来たって自分で言ったじゃないですか』
兄｢や、そうだけど...じゃあありがたくいただきます｣
『どうぞ』
一口ぱくり。
兄｢...うめ｣
もやしと卵がいい塩梅に味付けされている。俺コレ普通に好きだわ。
『美味しいなら良かったです。今度機会があれば兄者さん用にトマト缶とチーズ入れてみますね』
兄｢何それ超美味そうじゃん！｣
『だって好きなんでしょ？ピザ』
...ん？
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作者名：Alice:A | 作成日時：2019年7月24日 0時
