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三人は探偵社についた。Aが中に入ろうと扉に手をかけようとしたとき、中からAにとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「やや、やめなさーい!!」

その声は想定外だったようで、三人は少し固まってしまう。
「ここ、こんな事して何になるー。き、きっと親御さんも泣いてるよ………?」
「なんだアンタ!?」
「ひいい、ごめんなさい!」
と、もうひとつ声が聞こえてくる。結構切羽詰まった状態のようだが、Aは助けに入るでもなく扉を見つめる。

「アンタ、探偵社の人間じゃないな?」
「みみ、み、見ての通り、通りすがりの新聞配達です!」
「新聞配達の人が何のようだ?」
「…いくら憎いからって、人質とか、爆弾とか、良くないよ……生きていれば、きっと好い事がある…」
「好い事って?」
「うっ……!」
「だから好い事って何!」

そんなやり取りを聞きながらAは苦笑いを浮かべ、後ろの二人を振り返った。が、二人は首を振るのみ。
Aは諦めたようにもう一度扉を見つめる。

「茶漬けが食える!!茶漬けが腹いっぱい食える!!」
「…は…?」
「天上がある所で寝られる!寝て起きたら朝が来る!当たり前のように朝が来る!でも………爆発したら、君にも僕にも朝は来ない………何故なら死んじゃうから……」
「そんな事判ってる!」
とうとうこのやり取りが面白いのかコウの肩が揺れだした。フクは呆れたように扉を見つめる。

「ええーーーー!?……いやあ………やめた方が良いと思うけどなあ………だって死んじゃったら………死んじゃうんだよ…!?」
少年のこの一言でAは二人に目配せをし、探偵社を後にした。

そして暫くの後、コウが呵いだした。
「おい、コウ。」
フクが注意をするが止まらない。

「だってフク、生きる理由が茶漬けが食えるなんだぜ!?可笑しいったらありゃしない!!」
「まあ、可笑しいけど……」
「ぼくも死んじゃったら、死んじゃうんだよ?の下りは面白かったけどね」
三人で先程の話をしながら歩く。

「でも入る機会を完璧に見失った。」
「そうなんですよね。で、コウ。何時まで嗤ってる。」
「ひー、呵った呵った。とりあえずあの茶漬け男がA様の言う敦ですね。」
Aは何時戻るべきかを調べないとと後悔しているようだ。

フクがAに問う。
「A様。これからどうしますか?」
「とりあえず出直しだね。」

原作でもこうだったのかなと呟くAの声は誰にも聞かれることなく消えていった。

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作者名:玉兎 | 作成日時:2019年7月28日 10時

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