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「では最初から私の計画を見抜いて……」
樋口は手で盗聴器を潰しながら呟く。
「ほらほら起きなさい敦君。後から国木田君がくるとはいえ、負ぶって帰るの厭だよ私ー」
太宰は敦の頬を叩きながら楽しそうに云った。
樋口はその緊張感のない太宰を見て慌てて叫ぶ。
「ま、待ちなさい!生きて帰す訳には」

と、唐突に芥川が笑い声を上げる。
「止めろ樋口お前では勝てぬ。」
そして樋口と太宰の間に割って入り樋口を止める。
「芥川先輩!でも!」
樋口が芥川に抗議するが、芥川は太宰の方を向き太宰に話しかける。
「太宰さん、今回は退きましょう。しかし、人虎の身柄は僕らポートマフィアが頂く。」
「なんで?」
「簡単なこと。その人虎には闇市で懸賞金が懸かっている。その額は七十億。」

二人の会話に樋口は不服そうな顔をしながらも邪魔をせずに聞く。
「それは随分と景気の良い話だねェ。」
「探偵社にはいずれまた伺います。ポートマフィアは必ずその七十億を奪う。」
「では武装探偵社と戦争かい?やってみ給えよ………やれるものなら。」
そういいながら笑む太宰の顔は暗い。

そこまで太宰と芥川の会話を聞いていた樋口だったが、太宰のポートマフィアを相手にしても態度を崩さないことに痺れを切らし、
「零細企業ごときが我々はこの街の暗部そのもの!この街の政治、経済の悉くに根を張る!たかが数十人の探偵社ごとき三日と待たずに灰に消える!我々に逆らって生き残った者などいないのだぞ!」
と捲し立てる。

太宰は呆れたように頭をかいた。
「知ってるよそのくらい。」
芥川は目を閉じる。
「然り。他の誰より貴方はそれを承知している。__元ポートマフィアの太宰さん。」

帰るぞと芥川は云い、樋口も太宰を睨みながらその場を去ろうとした時付け加えるように太宰が云った。
「で、Aちゃんを返してくれたまえ。あの子は探偵社の人間だよ。」
太宰は盗聴器で樋口の動向を探っていた。しかし、ヨコハマの裏社会のトップの建物付近は盗聴出来なかったのだ。

太宰のその一言に先程まで冷めていた芥川が落ち着かない様子になる。
「Aは一時ポートマフィアが預かります。では!」
と云って異能を使い帰る芥川。しかも樋口を置いてけぼりだ。

「待ってくださいーー!」
と樋口は叫びながら芥川を追いかける。
太宰はえ?あの芥川君がそこまで?といった表情をしつつ二人が去った方を暫し見詰めていた。

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作者名:玉兎 | 作成日時:2019年7月28日 10時

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