【銀魂】花時の青い夢【合同企画】 (ページ43)

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「…………A」

高杉君の手が、私の顔に延ばされる。そのまま手のひらが頬を包み、親指がぐいっと涙を拭う。予想外に温かい手に余計に泣きたくなった。

ある程度拭うと、手はゆっくりと離れていく。まだ、離れないでほしいと思った。

彼の胸元にぽすん、と額を押し当てる。ゴツゴツとした感触に、あぁ、やっぱり彼も男なんだな、とぼんやり考えた。

「……ちょっと、こうしててもいい？」

「あァ」

彼の返事はやっぱりそれだけだった。でも、そのいつも通りの声色に何故かすごく安心して、私は幼い子供の様に大声を上げて泣いた。掴んだ彼のワイシャツの上に涙が落ちて濃い水玉模様が出来たが、彼は何も言わなかった。

泣けなくなったあの日からずっと喉に閊えていた違和感を、やっと吐き出せた気がした。

◆◆◆

「落ち着いたか」

「……ん」

散々泣いた私には、声を出すのもやっとの事で。しかし妙にすっきりとした感じもあった。

「…………俺は」

高杉君は話し始める。彼の唇の上に、一瞬赤い舌がちろりと這った。

「俺は、お前が必死になって練習してる姿、すげェ綺麗だと、思ってたよ」

その言葉は途切れ途切れで、ぶっきらぼうで。でも、壊れ物を扱う様に。とてもとても、優しかった。

「……あのさ、」

「また、やってもいいかな。ソフトボール」

「好きにすればいい」

「どうせ俺が止めてもやるだろ。そういう奴だよ、テメェは」

「あはは、それもそうだね」

「…………ありがと」

また、涙がほろりと落ちた。高杉君はいつも通りの不敵な笑みを浮かべる。私も涙を拭って、ニカッと笑って見せた。

◆◆◆

「仕方ねェから家まで送ってやるよ」

「え、いいよ。流石にそれは申し訳ない」

「どうせ帰り道同じだろうが。あと女避けに丁度いい」

「君……いつか刺されるよ」

「お前ェも道連れにしてやらァ」

「そんな事言ってるから駄目なんじゃない？もう他の子彼女にしたら？」

「なるか？」

「まさか！それこそ串刺し案件だよ！！」

「あァ？……Aのクセに俺をフってんじゃねェよ、さっきまで散々俺を求めていたのは何処の誰だ？」

「えぇぇこれフった内に入るの？！というかその言い方やめてェェ！！！」

少年と少女は騒ぎながら帰路を辿る。
一つだけ、少年には言えなかった事があったが、それはまた別の話となるだろう。

ちっぽけでどこにでもある物語は、なんて事無いありふれた結末を以て、ここで静かに幕を閉じる。

完