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爆豪君の表情が若干緩む。元々が凄いことになっていたのでそれでもまだ怖い顔の範疇ではあるのだが。
「んなモン必要ねえよ。俺の力は俺が1番把握してんだよ」
「……自分に自信があるのは爆豪君の長所でもあるけれど、それは早計だと思うな」
「あ？」
「見方を変えようよ。それとも爆豪君は握力を自己判断で計測するタイプなの？」
「馬鹿にしてんのか」
「ね、握力計使うよね。私の視線もその程度に考えてくれていいよ」
少しの間沈黙が流れた。即答で断られないだけ望みはあるのだ。頓智でも屁理屈でも何でもきかせて考えさせればいい。結局私が視てようが視てまいが絶対評価を持ち続ける彼の成長度は変わらないだろうけれど。
「少しでもうぜぇと思ったら殴りに行く」
「ありがとう、助かるよ」
あとは気分を害さないように気を付けないと。というか、意外とあっさり許可が出たな、というのが正直な感想で驚きだった。私の個性では声まではわからないから、精神面の成長はわかりにくいのだが、きっと変わっている部分があるのだろう。
「まあ、私は爆豪君が優勝する可能性が高いと思ってるからさ、頑張ってよ」
「てめェに言われるまでもねぇわ。俺が優勝すんだよ」
そう吐き捨てるように宣言するとさっさと帰ってしまった。もし自分が株主だったのなら、どんなに爆豪君の言葉が頼もしかったのだろう。ひと仕事終えたような晴れやかな気持ちで私も帰路についた。今年の雄英体育祭も楽しめそうだ。
それからというもの、私は少しだけ長く彼の実技訓練を視ていた。相変わらず時折目が合っていたけれど、観念したのか以前よりは目付きの鋭さは減っていった。ただ、1週間前ともなればさすがに全力で集中したいだろうから私も視線を緩めた。緩めた、というのは、俯瞰で視ていた中心を彼ではなく彼の近くの物に移動したという意味だ。ピントをくっきり合わせていたのを対象を移すことでぼやかしたと言った方がわかりやすいかもしれない。爆豪君は画角に収まっているだけなので、常に視える位置にはいるが認識はされづらくなる……筈だ。これも爆豪君が順調に強くなっているからこそできる譲歩である。ちょくちょく別の生徒の観察も繰り返して、実力差が推測できたから、もうそれを信じて答え合わせの本番を楽しむだけである。はっきり言って経営科の雄英体育祭の意義は他科と大きく変わってくる。売り子や議論を重視する者もいれば、私のようなエンジョイ勢もいるのだ。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
