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今日も特に代わり映えのしない観察結果だろう、とそろそろ個性を解除しようとした時だった。1年A組も授業終わりだったのか、生徒達が集まろうとしていた一瞬だった。爆豪勝己が、こちらを睨んでいた。厳密に言えば私は見えていない筈なのに、しっかりと目が合ったのだ。確かな感覚で、こんなことは初めてだったのでいつもはゆっくりと開ける瞳をばっと音が鳴るくらい見開いた。突然目に入る光量で目が眩んだ。

「ふ、ふふ……」

 予想外の出来事に思わず笑みが零れる。本当は大笑いしたいくらいの気持ちだが、同級生に気が狂ったと思われるのはまずいと理性が引き留めた。
 あれは自分が見られているという自覚のある目だった。どうしてわかったのだろう? 確かに彼の戦闘中の反射やセンスは大いに優れているものだが、まさか勘の鋭さで視線を認識したとでもいうのだろうか。なんにせよ“体育祭の注目株”以外の興味が湧いてしまった。あわよくば話を聞きたいところではあるが、まだ尚早だろう。やはり今年の1年生で優勝は爆豪勝己説が濃厚なのではないか。その日の帰り道はまるで新しい玩具を買ってもらった子どものそれであった。

 翌日も、その翌々日も、毎日少しずつA組の授業を覗き視ては睨まれるということを繰り返して確信に至った。どうやら彼は私の視線をもう完全に認識しきっている。だからといって変に緊張したりせず、パフォーマンスを落とさないところが素晴らしい。体育祭まではもう2週間程度しか無いが、この調子なら彼の能力はより磨かれていくだろう。
「察視さん、ヒーロー科1年見に行かないの?」
「後でさっと行くかも」
 やっぱり気になるよね、と言って同級生は一足先に1年A組へ向かっていった。先日の敵襲撃を凌いだということもあってか、敵情視察をはじめとした情報収集目的で1年A組の教室前には他科の生徒が集まっているようだ。私には個性があるから見に行ったことはないけれど、今年は少し面白そうなので行ってみようと席を立った。

「意味ねェからどけ、モブ共」

 凄い人だかりだと感心していたらそんな声が聞こえた。少し遠い声の主を背伸びして見ると、それは紛れもなく爆豪勝己本人であった。あの亜麻色の髪に鋭すぎる目付き、横柄な態度……本物だ! と感動していると、他科の生徒に反感を買いつつも爆豪勝己がこちらの方へずんずんと歩んできた。恐らく帰る通り道なのだろう。思ったより声が低い、と思いながら眺めていると、ばちりと目が合った。

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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです!応援も大変励みになっております。頑張ります! (2021年10月18日 1時) (レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです!文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています! (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります!文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:廿楽 | 作成日時:2021年8月26日 4時

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