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準決勝戦で常闇と対決し、勝利した爆豪は決勝戦の為に控え室へ向かっていた。その道すがら、見覚えのある人物が不自然な場所にいたのが彼の目に留まる。察視Aが、観客席ではない離れの通路で何者かと通話していたのだ。
普段なら気にも留めないが、そこが爆豪の通り道であることと、彼女の声色が自分と話す時とはまるで異なっていたのが妙に気にかかるので、つい足を止めていた。とはいえ、通話は終盤のようで、程なくして察視はスマートフォンをしまい、まるで疲労を吐き出すかのように大きな溜め息を1つ、そして軽くストレッチまでし始めた。一瞬でいつもの察視のイメージと合致して、先程まで見ていたのは、試合の疲れによる白昼夢だったのでは？ と自分を疑いかけたが、そんなはずはない。そういえば前に察視は経営科では有名人だとかうっすら言っていたような……半信半疑であったが、電話中の察視は確かに高校生とは思えない風格を感じた。
しかし爆豪はそんな感想をすぐに追いやり、代わりに腹ふくるる思いで心情を塗り替えた。察視は散々自分に注目している、などと言って試合を観てはいないのかと。爆豪は短気だった。だから、タイミングを見計らって通路にいる彼女に問いかけたのだ。
こちらに気付いていなかった彼女は間延びをした声で、本心か判別しかねる驚いた様子を見せる。それが余計に爆豪の神経を逆撫でた。驚いていたのなら彼女は個性を使って視ることすらしていなかったことになり、本心でないのなら単純に馬鹿にされている様に感じられたからである。
「休日も仕事熱心な方がいてね」
続けて「爆豪君に限って、私1人が観ないところで結果が変わるとは思えない」と真っ直ぐ目を見据えて言われれば、「当たり前だろうが」と返すしかない。そう口にしてすぐにやられた、と悟った。今の察視は相手の返答の選択肢を意図的に絞ったようにしか見えなかった。爆豪の持つようなアグレッシブさとは違う、有無を言わせない冷たい鉛の様な圧をその穏やかな口調に内包していた。
思えば察視は時々「上級生だから」という理由で片付けるにしては不自然な圧迫感を覚えさせることがあった。爆豪はそれを苛立ちとして認識していたが、その泰然さは彼女の長所でもあるのだろうと無意識に理解していた。そしてそれは、彼女の爆豪への最初の交渉が成功した理由の一端を担っているのだ。このような要因によって、こと舌戦においては察視に分があった。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
