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「警戒心が高くてよろしい」
「ケッ」
素直に奢られてくれた方が可愛いのに、という思いが無いと言えば嘘になるが、大人しく享受するのも彼のイメージではない。トーナメント前にあまり邪魔をするのも良くないだろうと思った私は観客席に戻ろうと踵を返した。
「てめェは」
「……おっと」
後方の呼びかけに歩みごとぴたりと身体が止まる。
「これが終わったら視ねぇのか」
「これ」というのは雄英体育祭のことだろう。体育祭が終わったら爆豪君を個性で覗き視ることはしないのか、そういう疑問なのだろうが、意図が読み取れない私は珍しく言葉を詰まらせていた。答えは出ている、視るつもりは無い予定だった。
「そうだね、まあその必要は無くなるかなぁ」
「……せいせいするわ」
「ごめんね〜」
「謝罪がうっすいんだよ黙ってろ」
きゅ、と口を結んでみるも耐えきれなくて息を漏らしてしまう。込み上げる笑いを噛み殺しながら「楽しみにしてるね」と残してその場を去った。観客席へ戻る道中に並ぶ出店で適当な昼食を買い、観客席で頬張る。香ばしいソースの風味と紅生姜が効いた焼きそばは、屋台だと侮れない満足感が得られる昼食となった。ああそういえばどこかの専門店と提携していると書いてあったような、と思い出しているうちにプレゼント・マイクのアナウンスが響いた。
トーナメント戦前のレクリエーションなのか、A組の女生徒がチアガールの服装で立っている。一種のアピールかとも思ったが、複雑な表情の子もいるので裏で何かあったのだろう。気の毒だと思いながらレクリエーションを眺めた。爆豪君が何をしているのか視るという考えが無かったわけではないが、その行動で最高のパフォーマンスが出せなくなったら元の子も無い。まあ、彼ならば「関係ねぇわ」と切り捨てそうだが、個人的な気遣いである。
ヒーローを目指す生徒達にとっては最大のアピールとなるであろう個人戦がいよいよ始まる。といっても、1年生の頃からメディア意識をして戦うような生徒はほぼいないだろうから、純粋な技能のぶつかり合いを楽しむ観客が殆どだろう。
1試合目、2試合目と1回戦も順調に進んでいき、その最後に爆豪君と麗日さんの試合が始まる。どちらもA組だからお互いの個性は把握しているだろうし、その情報をどう戦略に組み込むかが重要だろう。始まってもいないのに爆豪君優勢という雰囲気に、それ程爆豪君の期待値が高いということではあるが、私は顔を顰めた。
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廿楽(プロフ) - むさん» コメントありがとうございます。お褒めいただけて嬉しいです！応援も大変励みになっております。頑張ります！ (2021年10月18日 1時) (
レス) @page21 id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
む(プロフ) - コメント失礼します、とても面白くて続きが待ち遠しいです！文章がとても好きです。これからも頑張ってください、応援しています！ (2021年10月17日 20時) (レス) @page4 id: e0a285cdcb (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - いくまさん» コメントありがとうございます。大変励みになります！文章の表現諸々を好みと言っていただけて嬉しい限りです。遅筆ではございますができる限り更新したいと思いますので、これからもどうかよろしくお願い致します。 (2021年9月21日 18時) (レス) id: d79b86d8d5 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。作者様の作品、全て読ませて頂いております。文章の書き方、構成、表現が全て私の好みに当てはまっており毎回の更新とても楽しみにしています。これからも更新諸々頑張って下さい。応援しています。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2021年8月26日 4時
