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30話 ページ30

なんだろう、とAは缶を見つめた。

パカン、というブリキ缶が弾ける音とガサガサと紙の擦れる音がした。

「A」

「んぐ」

名前を呼ばれると同時に、Aの口に何か黒いものを指で押し込まれるように入れられた。
思わずリヴァイの指先まで口に含みそうになり、Aはすっと顔を引く。

何か硬いものが口の中で転がる、それは舌の上でじわりと溶けた。

「……美味しい」

今まで味わったことのない新しい味にAは自然と感想が零れた。

「これ、なんですか?」

「チョコレートだ」

「ちょこれーと…」

覚えるように復唱するAの隣に、リヴァイはまた腰を下ろした。
そしてもう一粒取り出すと、再びAの口に押し付ける。
二粒目は、もっと美味しく感じた。

「普段甘いものはあまり食べないんだが」

リヴァイは中身を確認をする様にブリキ缶を傾ける。

「壁外調査で仲間を失った時だけ、これを食べる」

リヴァイの横顔は、どことなく寂しげに見えた。

「馬鹿らしいが、少しだけ落ち着くんだ」

Aにはそれがなんとなく分かる。癒えるとは言えないが、優しい味に気持ちが少し楽になるのを感じた。

「……そうですね」

リヴァイが手元からAのほうに視線を向け、空いてる手で目元を隠す白い前髪をかきあげる。

「少しはましな顔になったな」

「…!」

「外で会った時は死にそうな顔してた」

「……そ、うでしたかね」

真っ直ぐ見つめられ、Aは急に恥ずかしくなった。
リヴァイはAの長い前髪を横に流すように分ける。
そして「もうひとつ食っとけ、滅多に食えるもんじゃない」と缶をAの方に差し出した。
Aは「ありがとうございます」と礼を言いながら、缶の中から1粒取り出す。
先程は直接口に入れられて確認出来なかったが、まじまじ指先で摘んでいるチョコレートを眺めた。
焦げ茶色で、つやつやと光を反射させている。形は美しい橢円形、中央にはどこかのブランドだろうか、美しい模様が浮き出ていた。

「ずっと摘んでると溶けるぞ」

と、リヴァイに言われAはすぐさま口の中に放り込んだ。

「本当に美味しいです、ごちそうさまでした」

「どういたしまして」

少しだけリヴァイの口元が緩んだように感じた。

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塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません!全然大丈夫です!! (2019年2月19日 22時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜!とっても面白いです!何と言っても設定が凄く好みです!!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか? (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして!ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…!!続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やし野 | 作成日時:2017年12月17日 13時

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