27話 ページ27
「場所を変えよう、付いてきなさい」
「はい」
ついて行った先は、客間であった。貴族や上位の身分の者を招待する部屋である。
わざわざ訓練兵である自分が何故この場につれて来られたのか、そもそも自分になんの話があるのか、不思議でならなかった。
「そこにかけたまえ」
「はい」
遠慮がちにソファに腰を下ろす。
憲兵の男も間にテーブルを挟んだ向かいのソファに座った。
「訓練兵を首席で卒業したらしいじゃないか」
「は、はあ…」
「初めて君を見た時からただならぬ何かを持ってると思っていたよ」
「それはどうも…光栄です…」
初めて会った時、幼いAにさえ分かるほどブルブルと震え怯えていた人がよく言う、とAは心うちで悪態をつく。
「本題だが」
と、憲兵は座り直して姿勢を正す。
「あの事件の主犯であった貴族が、死刑になることになった」
そのとき、Aの頭の中は真っ白になった。目の前にいる兵士が何を言ってるのかよく分からなかった。いったい誰がどうなるんだと、頭の中で理解する事を拒んだ。
そんなAの事などいざ知らず。
「よかったじゃないか、これで君も解放される」
悪意などない、無垢で、ありがた迷惑な言葉だった。
「あの……主犯の貴族、とは…その…」
「? 君を買ったあの婦人だ」
「!!」
うそだ、うそだうそだ、うそだ。
お母様が
そんな
死刑だなんて
うそだ
うそだ
頭の中で自己暗示のように呟く。
お母様が牢屋に入れられている事は知っていた。憲兵の人に孤児院に入る前、もう会えないと伝えられてもいた。
それでも、生きているなら、とAは悲しみを押しつぶしたのに。
それなのに、目の前の男に告げられたのは、幼き頃の想いを打ち砕かれたのだ。
「会わせて下さい!!」
勢いよく立ち上がり、ばん、とテーブルに両手をついて身を乗り出す。
余程予想外の言葉であったのか、憲兵は驚いた表情だ。
「な、何を言ってるんだ」
「お願いします!あの人に会わせて下さい!!」
息を切らしながら今にも飛び掛ってきそうな表情で訴えるAに、憲兵は落ち着きなさい、と付け加える。
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塩キャラメル(プロフ) - やし野さん» すみません!全然大丈夫です!! (2019年2月19日 22時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» その場のニュアンスで読んでいただけたら幸いです。無計画故の矛盾点が生じてしまい、申し訳ありません。詳しくは『Full 3』のお知らせにて記載しておりますので、宜しくお願いします。 (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - 塩キャラメルさん» 感想、ご指摘頂き感謝します、修正させて頂きました。本作品は制作途中で年代設定を変更しておりますので、正しくは100期卒業になります。また年代変更により今後も年齢、登場人物等の矛盾が複数発生していますが→ (2019年2月12日 1時) (レス) id: da4ca0ab74 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 初めまして〜!とっても面白いです!何と言っても設定が凄く好みです!!こんな僕がご指摘と言ってはあれなんですが、訓練兵解散式の時、第100期?かな。。次の時に102期になってなせんか? (2019年2月12日 0時) (レス) id: 1b9a60cb94 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - ののさん» 初めまして!ののさんコメントありがとうございます。嬉しいお言葉までいただけてとても感激です…!!続編の方も何卒よろしくお願いします(*^_^*) (2017年12月24日 10時) (レス) id: f0cd2ef672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2017年12月17日 13時