本歌(♂)と写し(♀)と (ページ2)

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-山姥切長義side-

今日の鍛刀でも、彼が来てくれないかとそわそわしている彼女を見ていると、こちらまで来てくれないかと希んでしまいそうになっていた。

いや、既に希んでいたのだろうが。

「わぁ、女の子だ！こんのすけぇ〜!?大至急！来てください！」

「え、ちょ、主!?」
『!?』

そうして来たのが彼──いや、彼女だという訳だが。

…あの主は新しい刀剣を顕現させたばかりなのに鍛刀部屋を飛び出して行ってしまった。

「…最悪だ」

自分1人でどうしろというのか。

望んでいないのに、彼女や本丸のために希んでしまった己の写し。

だがいざ目の前に現れるとなると、写しだからと、薄汚れた布を深く被り、自分を卑下するような様に腹が立ち、嫌悪感が生まれてくる。

それに加えて…

「女士？」

俺が知っているのは男士だ。
俺に似た容姿を持った俺の写し。

なのに目の前に居るのは、少し長い美しい金髪、長い睫毛、華奢な身体。

服装は女らしく変わっていて、少し短いスカートが視界の端にチラつく。

少し儚げな印象から、触れれば簡単に折れてしまいそうだ。

『本歌？』

高い女の声で呼ばれ、ハッとなる。

チラとそちらを見ると、偽物くんがキラキラと輝く大きな碧眼を少し潤ませながらこちらを見上げ、心配そうな顔をしている。

その姿に何故かイラッとした。

「やぁ、偽物くん。久しぶりだな。顕現したてで悪いんだが」

腰に指していた自身を抜いて、彼に切っ先を向ける。

「やはりお前は俺にとって毒だ」