本歌(♂)と写し(♀)と (ページ1)

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壱ページ1

-山姥切長義side-

今日の近侍は俺だということで、鍛刀していた刀剣を顕現しに来た。

この本丸の審神者は就任4年10ヶ月という、大分長い年月審神者をやっている、まぁ、ベテラン審神者とでも言おう。

そんな彼女の本丸には大体の刀剣が揃っているのだが、やはり居ないものもいる。
それが普通なのかもしれない。

が、彼女の本丸に居ない刀剣は少しおかしい。

何故なら───彼だけが、居ないのだから。

彼女の初期刀であった、山姥切国広だけが。

＂初期刀の山姥切国広＂を見たことは無い。

俺が此処に来た時には既に居なかった。

初期刀が折れたという報告が入っていたことは記憶にあったが、それが誰だったのかは知らなかった。

偽物くんが居るかもしれないと少し警戒していた俺に、主は「此処に山姥切国広は居ませんよ」と言ってきた。

それで、「あぁ、初期刀は偽物くんだったのか」と気づいた。

それ以降主は偽物くんについて何も話さなかったので、他の刀剣男士に聞いてみると、偽物くんはまだ経験の浅い刀剣たちと出陣した際、運悪く出くわした検非違使によって破壊されたのだという。

本来ならば倒せたはずの敵を、仲間を守るために死んだのだ。

その時俺は、「なんて尊く馬鹿な死に方をしたものだ」と思った。

俺としては偽物くんが居ない本丸は嬉しいこと限りないのだが、偽物くんが居ない本丸はどこか暗く、いつも刀剣たちに優しく微笑んでいる彼女も寂しそうで、何故か俺の心も痛んでいた。