14音 遭遇 ページ16
「はあ? ライブだあ?」
夏休みに入ったことで、久しぶりの再会となった幼馴染みが、エナメルのバッグをぎしぎしと揺らす。
「……大丈夫、なのか?」
賛成しかねていたのは、やはり、Aを心配してのことだったらしい。
-一哉も一緒だし……大丈夫だよ-
そう打ち込んだ画面を見せて笑ったAだったが、その胸の奥に不安が残っていたのに、笠松は、気付いた。
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「A、どれ使ってたっけ」
楽器店を訪れた二人は、ギターの弦を眺めた。
「……特にこだわってなかったな、そういや。オレはほとんどこれ使ってーーあ」
「?」
笠松がある方向……楽譜コーナーを見て、顔をしかめた。
「あれ!? 笠松さん!? なんで居るんすか!?」
「こんにちは」
高尾と緑間が、そう言いながら近付いてくる。
Aは夏休み直前に出会った二人を思い出し、笑顔で会釈した。
「Aさんも久しぶりっすね!! なんで楽器店に居るんすかー?」
「Aもオレもギターやってっからな。弦買いに来た。お前らは?」
「真ちゃんが楽譜買いに行くっていうんで着いてきました!」
そう高尾が言うと、笠松はもしかして、と尋ねた。
「例の……おは朝のラッキーアイテムか?」
「あっはっは! 真ちゃん他校の先輩にまでおは朝の人扱いじゃん!」
「高尾、黙れ」
Aがおは朝とはなんだろう、と考えていると、緑間がメガネのフレームをくいっと上げて、続けた。
「帝光に入学するまで指導していただいていたピアノの師が、市民会館でチャリティーコンサートをするので二曲ほど弾いてほしいと頼まれたのだよ」
「その譜面買いに来たのが真相っすねー」
「緑間お前ピアノできんのか。確かにシュートも繊細で丁寧だからな。……そうだ」
「……?」
ちらり、と笠松はAを見たあと、緑間を見た。
「どちらか一曲だけでいい。コイツも一緒に演奏してくれないか」
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作者名:紫 | 作成日時:2019年3月6日 1時