量 産 型 ぽ た く 【 うらたぬき 】

ないんてぃーん ページ20

｢これで大丈夫、かな。｣

姿鏡の前でくるりと一回り。

ワインレッドのコーデュロイのロングスカートに、襟元がレースになっている白のトレーナー。足元は白の靴下にこげ茶のローファーみたいなヒール付きのパンプス。
コートは茶色のグレンチェックで、大人っぽくまとめた...つもり。

おしゃれな彼の横に立つには考えて決めないと、とデートが決まった1週間前から練りに練ったコーディネートだ。


あれからちまちまとLINEを続け、この日が空いてるこの日がどーだと話し合った結果今日に決まった。

毎日話すから早く会いたくて、おやすみという言葉を電話越しじゃなくて直接聞きたくて、待って待って待ちわびたこの日。今日のために1週間を乗り切ったのだ。


深緑のマフラーをリボン巻きでつける。これもたくさん練習した。

緑色のマフラーは少し意識したんですよ、なんて。


キャメル色のショルダーバッグを持って、行ってきますと声をかけて家を出る。

お兄ちゃんがリビングのソファからひらひらと手を振るのを尻目に、玄関のドアを閉めた。


待ち合わせ30分前。めちゃめちゃ緊張してるからか、予定よりも何本も早い電車に乗ってしまった。

あああ、どうしよう。変だと思われないかな。

心臓のばくばくが止まらなくて、あたまがぐるぐるする。


ああ、本当にどうしよう。こんなに緊張する待ち合わせは人生初。

とりあえず落ち着かないから誰かに連絡しよう。

とりあえず、とLINEを開いたその時だった。


｢お姉さん今暇ですか？よかったらお茶しません？｣

見知らぬ声に驚いて、思わず顔を上げる。
至近距離に、大学生くらいの知らない男の人の顔。

少し遅れて、ようやく脳が理解した。

これ、ナンパか！と。

とぅえんてぃ→←えいてぃーん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す