鬼が好きな少女は。弐

伍拾捌 ページ8

「……ん。」

ゆっくりと目を開けると見慣れない天井。
あぁ、私……童磨さんの所に来たんだ。

いつもなら朝、無惨さんが隣に居てギューってしてくれるのに。

誰も居ない。


キュッ…となぜか胸が痛む。


「Aちゃん〜ちょっと来て。」

襖の外から童磨さんの声が聞こえて、急いで童磨さんから借りた着物に着替えて出る。



「……少し遅くなってごめんね……。」

「ううん。気にしないでよ。Aちゃん、朝ご飯食べないとでしょ？」


「うん。」

「信者達が用意してくれた物があるからおいで。」



私は童磨さんの部屋に入った。


「わぁぁ……美味しそうっ。」

無限城で食べる朝ご飯ももちろん美味しそうだけど、こっちはまた違った感じ。


「いただきます。」
手を合わせて食べ始める。



「……どう？美味しい？」
童磨さんは虹色の瞳を細めながら聞いた。


「うん！」
色の着いたご飯、味染みてて凄く美味しい。


「Aちゃん、炊き込みご飯好きなんだね。」
「炊き込みご飯……って言うんだ！」



童磨さんがご飯食べないの知ってたけど、ずっと見られながら食べられるのも少々恥ずかしいものだ。


「童磨さん……あの、そんなに見つめられると、恥ずかしいよ……」
「あっ！ごめんね！Aちゃん本当に美味しそうに食べるから。ついつい。」

「この朝食が本当に美味しいからだよ」



「あ、そういえば、Aちゃん朝食食べたらすぐに無限城行く？」

「…本、まだ読み終わってなくて……その………貸してほしいの……。お願いします…！」
「あ、本？別にいいよー？貸してあげるよ〜！」
「えっ！？いいの！？やったぁ！！ありがとう！」

「じゃあすぐに無限城に帰るんだね？」

「うん！……無惨さんに早く謝りたい。」
そう言うと童磨さんは微笑んだ。





その後朝食を食べ終え、信者の方達にお礼を言った後、傷口の手当てをしてもらい、部屋で本を選んでいく。




「えっとこれと、これと、これ！三冊借りるね！…返すの5日後でいい…？」

「Aちゃんの好きな時でいいよー？また借りにおいで。」

「ありがとう！童磨さんっ。」
私は本を抱きしめて言った。


「あまり本に夢中にならないようにね〜。」

「え？本に夢中……？」

「うん。昨日も夢中になってたし。いい事なんだけどね……。」

「いい事……でもダメ……難しいね…」


「ふふっ、そうだね…琵琶の君〜頼むよ〜」

童磨さんがニコニコしながら言うと琵琶の音がした。

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