鬼が好きな少女は。弐

佰 ページ50

堕姫side


「ﾄﾞｷﾞﾄﾞｷﾞなんだぁ！！」


遊郭から抜け出して、Aに会いに行けばこの調子で、引いてないと言ったら嘘になる。
実際、お兄ちゃんはこのAのおかしな状態をみて、Aじゃないと言い張っている。


「…そ、そうなの？…ってあんた、声ガラガラじゃない。どうしたのよ。」

「あはは…少し叫びすぎちゃった！」

困ったように笑うAはいつもならめちゃくちゃ可愛らしいが、声ガラガラで笑うAはめちゃくちゃ心配になる。



「一睡もできなくてね、もう、頭の中…うふふ……」

「…A〜、も、戻ってこい〜お願いだああ！」


お兄ちゃんは、耐えきれなかったらしい。私の背中に戻ってしまった。


「……A、体の調子はどうだ…」


急にフラリと現れる上弦の壱、黒死牟が現れて驚く。


「うふふ…黒死牟さん！…大丈夫〜！！」

「…酒か？」

「え？酒」

「…酒の香りはしない…な。」


Aの首元に鼻を寄せ匂いを嗅ぐ姿を見て、慌てて二人の間に割り込む。


「ちょ、A。あんた一回寝てきな。」

「うふふ…手放す気などない。…だって…嬉しくて、嬉しくて…」


あぁ。なるほどね。
あの御方に言われて…それで、ふわふわしてるわけ。

「……」

にしても、上弦の壱の殺気を何とかして欲しいのよね。
ここで、無惨様が来てくだされば良いのに……。


「A、目の下に隈……」

上弦の壱…黒死牟は私が間に割り込んだのにも関わらず、手を伸ばしてAの顔に触れる。


「黒死牟さん…えへへ…もう、心がふわふわしてて……」

Aは無惨様しか見えてないのに……黒死牟は諦めていないみたいなのよね。



「…寝た方が…いい。……膝枕…してやろう」

「…いやいや、黒死牟さん、大丈夫だよ！」

Aはニコニコしながら言う。きっと頭の中は無惨様だらけなんだろうなと、すぐに分かる。




「……A。」

悲しそうに俯く黒死牟の姿に私はついつい固まってしまう。
あの黒死牟がここまでなるなんて……



……でも、そうね。


無惨様が狂うほどにAの名前を愛おしそうに呼ぶんだもの。


無惨様だってやられてるのに……


他の鬼がやられないわけないわよね。




「堕姫ちゃんっ！」

……私もやられてるわけだし。


「何よ。ヘラヘラしてんじゃないわよ。」


＊＊

ここまで読んでいただきありがとうございます！
評価、お気に入り本当に励みになります！
続編もよろしくお願いいたします！

この小説の続きへ→←玖拾玖

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す