鬼が好きな少女は。弐

伍拾壱 ページ1

「む、ざ…さんっ……」

もう、痛さと恥ずかしさで涙が止まらない。


「泣いたら許してもらえるとでも？甘い。甘過ぎる。」

無惨さんの目は今まで見た中で一番……ゾワッとくるものだった。
どう表現したらいいのか…とても冷たく恐ろしいという訳ではなく…

「……ごめんなさいっ…ごめんなさ……」

「許さない。」


そう言われたか。と思えば無惨さんがしゃがみこむ。どうしたのだろうと思えば太ももに激痛が走る。先程より一段と高い声がでる。


立って居られなくなり倒れようとすれば床に組み敷かれる。

……嫌な予感がする。



もう首元、足、痛みが私を襲い逃げられない。


「っぁあ！いたっ…無惨さん…嫌……お願い……やめ……」

「許さない。」

無惨さんは、もう、いつもの無惨さんではないのは顔を見て分かった。
帯を外されていき嫌な予感しかしない。怖い、怖い、怖い……

「…無惨さん」

呼びかけてもいつもの優しく笑顔ではなく、


「A。」
スっと目を細め私の頬を撫でる無惨さん。

嫌だ。嫌…こんなの無惨さんのわけない。



黒死牟さんを見ようとすれば顔をグイッと無惨さんに向けられる。


「よそ見をするな。」


そう言われて顔が近づいて来た時、



ドンッと音がした。

「…黒死牟…何をする。」


無惨さんが頭を押さえた隙に、勢いよく持ち上げられた。


「！？」

「黒死牟！！」


叫ぶ無惨さんに黒死牟さんが私に言った。


「……今だけ、無惨様に嫌いと叫ぶのだ。怖いと」

「今の無惨さん怖いです！！…き、嫌いです！！」



嫌いなんて感情は無いけどとにかく指示されたどおり叫ぶ。


「……き、らい。」
ハッと我に返った後、固まった無惨さんを見て黒死牟さんが口を開く。


「鳴女。」






私は黒死牟さんに抱えられたまま、無限城を出た。

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