22話 ページ22
「冨岡さんって昔からあんな感じなの?」
「…どうだろう」
蔦子姉さんと2人だとよく泣いて甘えててって聞いた事があったけど、私と2人だと泣かないし、かと言って特別優しかったわけでもない。
手は繋いでくれていたけど、いつも歩幅が大きくて前を歩く兄さんの顔は見えなかったし。
「仲悪いの」
「…どうなんだろう」
鬼殺隊に入って、久々に会って、避けられているのは誰が見ても分かるはず。
もともと兄さんの選別を終えた時からあまり会話は無かった。狭霧山に顔を出してくれてはいたけど、2人でワイワイ話すことはなかった。
「…25になる前に死ぬって言われた時、ちょっと心配してくれるんじゃないかって思った。」
ちょっと、期待した。
「何か、言って欲しかった。」
大丈夫だっていう慰めでも、何も言わないで手を握ってくれるだけでも良いのよ。
命をかける仕事だけど、本当はまだ死ぬ覚悟無いから。
「側にいて欲しい、」
横にいるだけで良いの、
「話を聞いて欲しい、」
カナヲと友達になったんだよって、
「話を聞きたいの、」
つまらない話でも、なんでも良いの、
「今時透がしてくれてること、全部して欲しいの」
身の上話をしてくれて、こうやって吐き出した私の我がままを聞いてくれて、同じ柱に寄りかかって、
それだけよ、それだけで良いの。
「…風邪引くから、早く戻って。ここ真っ直ぐ行けば空き部屋あるから」
もたれかかっていた時透は気付けば私の前で屈んでいて、首にかけていたタオルを私の頭にかけた。
「ついでに頭を拭いてもらいなよ。」
こうやって。とワシャワシャと手を動かして水気を切った。
「僕、Aのこと結構嫌いだから手を貸そうとは思わないけどさ、」
兄妹間の問題は自分でなんとかしろって話だし、と拭い終わった頭をペシペシ叩かれた。
「話くらいは聞いてあげる。」
「…どうも」
「柱の時間は高いから。もう少し喜べば?」
「喜んでる」
霞柱必殺デコピンが本格的に額凹んだが時透の指折れたかの二択な音がした。多分前者。
「あ、そうだ」
「まだ何か…」
おでこを両手で守って蹲れば、満足そうに笑っていた。
「何も思い出に耽ってる時の表情だけが、その人を想ってるとは限らないと思うよ。」
「………」
「泣きそうな表情になるのは、その人がそれほど大事だからでしょ」
って、そんな話をした。
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柊蓮(プロフ) - 毎年、誕生日に読んで号泣してます…大好きです。この作品も、同じ作者様の作品も。ついに夢主ちゃんとおんなじ16歳になりました…来年もまた読みに来ますっ素敵な作品を本当にありがとうございます。 (2月9日 1時) (レス) @page50 id: 4d2be51c25 (このIDを非表示/違反報告)
芽依 - ボロ泣きです、、最高です、後日談までもう泣けてくるんですが、、すれ違う兄妹の書き方が神ってますね、素敵な作品を読ませていただきありがとうございました、、! (1月30日 10時) (レス) @page50 id: e9435a06b7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 涙止まりませんでした、、、出会えて良かったです、、、 (11月24日 13時) (レス) @page50 id: 477ea6ec3d (このIDを非表示/違反報告)
ピンス - 流石に泣きました。後日談も最高です。神作品ありがとうございます… (11月10日 23時) (レス) @page50 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
てんごく(プロフ) - めっちゃ泣きました。凄い良いお話です (10月5日 18時) (レス) @page50 id: e622d65d6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だむい | 作成日時:2020年7月26日 20時