フクシュウ/1 ページ14
目黒は地下の通路を一人で進み続けた。ここまで侵入される事を想定していなかったのか、敵は誰も出てこなかった。
歩いて行くと左側に出てきたのは白い扉。目黒がかつて幽閉されていた部屋である。
目黒はその扉の前で一瞬足を止めたが、顔を顰めただけで通り過ぎた。
目的地はここではない。こんな何もない部屋には用はない。
足を進めて辿り着いた、突き当たりの部屋。目黒はその扉を開けた。
この部屋がUtopiaの実験室である。つまり、目黒がconfusionをされた場所でもある。
様々な実験器具が置かれた広い部屋の中には、白衣を着た者が何人もいた。
突然の来客に研究員たちはざわついた。消えた目黒が、あの「Blood」が突然やってきたのだから。
「お前……「Blood」……!!」
mg「……っ」
誰かの声を皮切りに、無数の視線が目黒に向けられる。
目黒は思わず立ち竦み、沸き上がるどす黒い感情を必死で押さえた。
何とか口を開いた彼は、内に秘めていたものをか細い声で吐露した。
mg「……して、」
「は?」
mg「元に……戻して」
それが、目黒がここに来た目的だった。
confusionを施したUtopiaの人間なら、confusionを元に戻す方法を知っていると思った。
こんな化け物になった自分を、人間に戻してくれると思った。
「……知らねえよ、そんなの」
一人の研究員が吐き捨てた台詞で、目黒の願いはあっけなく砕かれた。
confusionには成功しているものの、体内に溶け込んだchipを抽出できるほど研究は進んでいなかったのだ。
僅かな希望を踏み潰されて絶望した目黒に加虐心が湧いたのか、研究員たちはにやにやしながら言葉を突き刺した。ろくな研究をしていない奴らが、ろくな性格をしている訳がなかった。
「お前は一生化け物のままだよ」
「人殺しが今更元に戻れる訳ねえだろ」
「お前なんてただの実験台じゃねえか」
「さっさと消えろ」
浴びせられる数々の暴言と、畏怖と憐れみと好奇と嘲笑の視線。
何人もの人間を殺した映像がフラッシュバックし、目黒は頭を抱えた。
mg「っ……あ、あ」
化け物、人殺し。その言葉が目黒を蝕み、狂気を育てていく。
回復してきたとはいえ精神を病んでいる人間が、再び闇に毒される。
そんな状態で彼の正常な思考が、理性が、働く訳が無かった。
mg「……ははっ」
目黒の中に眠っていた真っ黒な芽が弾けた瞬間だった。
乾いた笑みを貼り付けた彼は、その瞳を真っ赤に染め上げた。
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ふわふわ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後の最後まで展開が読めなくて魅入ってしまいました。読んだ後は言い表せない気持ちになって…終わってしまうのは寂しいですが、この作品に出会えて良かったです。 (2020年7月5日 10時) (
レス) id: f520444a12 (このIDを非表示/違反報告)
猫茶(プロフ) - 最後まで面白かったです。完結お疲れ様でした。ものすごく楽しい時間をありがとうございます。今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月16日 0時) (レス) id: 49683351d4 (このIDを非表示/違反報告)
87(プロフ) - 完結お疲れ様でした！本当に大好きな作品で、終わって欲しくないとすら思っていました、、なんだかすごく大きな問いを私たち自身にも投げかけられたような気分です。楽しませていただき、本当にありがとうございました！今後の作品も楽しみにしています。 (2020年6月14日 17時) (レス) id: 14f6dae557 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 完結お疲れ様でした！めちゃめちゃ面白かったです！毎日楽しみにしてました！ありがとうございました！ (2020年6月14日 14時) (レス) id: c32ac9b701 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 完結お疲れ様です!!怜さんの作品の更新を毎日楽しみにしてました!!またいつかこういう能力系などのすごい作品が作られるのを待っています!! (2020年6月14日 13時) (レス) id: f176b79d77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜
| 作成日時：2020年6月5日 21時
