32話 対話 ページ3
「……これも本当に重大機密ですので他言無用でお願いしたいのですが……彼らの研究ではかつて神の力を得る前段階の実験として、動物の力を人が得るために獣人族を造りだしています」
客室は水を打った様な静けさに満ちた
Aに獣人族の知り合いはいない、いないが今日式典からの帰り道で街中に当たり前のように溶け込む彼らを見た
きっとアズレアだけではなく、世界中に数ある中のただ1つの種族として馴染んで生きている彼らが
自分の心臓の音が大きくなった様に感じる、もう知らなかった頃には戻れないとただ何となく理解した
知ることとは己の血肉となり武器となり、常に正しく前に進む力になるとは限らないのだと、初めて思った
賢者は言葉を続ける
「更に魔法学や精霊術の基礎となる考え方も彼ら由来です
遥か昔の事ですが、どちらも竜の扱う技術を分析・解釈・再構築した技術ですので
ですが基本的には根拠なく他者を悪魔認定したり、大量の人死を出したりといった活動を行っているようですね」
クルーガーは何とか空気を和らげようと試みたが、邪教団について話すのと両立させる事は難しかった
Aは自分のせいで皆に本当だったら知らなくていい事を聞かせてしまったと質問したことを後悔しそうになったが、隣に座るアスールが軽く鼻で笑う
「馬鹿な奴らだ」
その短い一言に張り詰めた空気が僅かに緩んだのを感じたAは、言いようのない安心感を覚える
ラールは苦笑しつつ穏やかな声で続けた
「奴らの思想は国境を問わず根を張りますから、あまり楽観視するのは危険な相手なのですよ」
Aとトールが曖昧な声を上げつつ、何となくお茶を飲んでいるとノックの音が響いた。
立ち上がろうとするクルーガーに「私が行きますよ」と一言かけたラールが扉の前に立つ。
「何用だ?」
「殿下、外へ出られていたお客人が戻られました」
「なるほど、把握した」
扉越しにメイドと言葉を交わしたラールは笑顔で振り向いた。
「皆さん、丁度良い時間帯ですし一緒に夕食にしませんか」
その言葉に笑顔を咲かせたのはトールとAである。
救われた様な心地のクルーガーも笑顔で訊ねる。
「まさか殿下もご一緒して下さるのですか?」
「今日やるべき事は終わらせてありますからね」
そう言うと赤髪の王子は嬉しそうに笑った。
Aが何となく、柔らかな魔法灯に照らされた窓の外を見やるといつの間にか外は暗くなっていた。
黒くなったガラスに皆の姿が柔らかく写っている。
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作者名:あああああ | 作成日時:2025年12月15日 8時


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