36話 覚悟 ページ20
Aは突然自分の過去の記憶を見透かされた様な心地がして動揺した。
言葉を紡ぎ出せずにいると、ケインが再び話し出した。
「君みたいな繊細な子や勉強熱心な子が会いに来てくれて嬉しいよ、ありがとうね
私の人生や存在を重荷として背負わせるつもりは全くないんだよ、でもね……私の事を知ってくれた人がいると思えると、私は心が安らぐんだ」
Aは直感的に、ケインが死と喪失という恐怖に必死で向き合っているのだと思った。
それなのに出てくる言葉の優しさに、心臓を突き刺されたような心地がした。
強い、でもそれとも少し違う、適応せざるを得なかった……耐えるために
ふとラールの言葉を思い出す。
貴方は何もできない小さな存在ではありません
貴方が足の裏を傷だらけにしながらも生きて戦う道を歩んでいるのは、貴方の強さ故です
言われた時にはただ何となく肯定して貰えているという感覚しかなかったが、今やっとその言葉の意味を理解できた気がした。
ケインさんは逃げずにずっと戦ってきて、それを娘さんも、病院も、アラストルも、きっともっと沢山の人が支えて見守ってきたのだろう。
何十年も生きてきて、でも今は他者との交流で得られる安心を支えの1つにして生きている。
その未来を閉ざした瘴気が払えるのならそうしたい。
Aは軽く手を握り返した。
「僕は……色々あったけど、少しでも人の役に立ちたいって、思ってて……」
ケインは掠れる声を返した。
「そうか、優しいんだね……それを聞いたら、私も役立ちたくなってきたよ、いくらでもここにいていいからね」
喉の奥が熱くなった。
「ありがとうございます……」
腹の底まで深く息を吸い込み、意識を完全に影へ集中させる。
影がゆっくりと結ばれた手を伝って入ってくる。
やはりラールの時と同じように不快感も何も感じなかった。
5秒程でケインに張り付いていた影の全てが消え去っているのがわかった。
クルーガーの顔を見上げる。
事前に決めていた通り、ラールの時と同じならここからは肉体の修復が必要になってくる。
クルーガーが口を開いた。
「そう言えば私はシドニア魔法帝国国家治療魔法師の資格を持っているのですが、よろしければ少し苦しみを和らげるお手伝いをさせて頂けないでしょうか?」
そう言うとクルーガーは自身の胸元に並ぶバッジの1つを指さしてみせた。
治療魔法を使用された患者には魔力アレルギーは起こらないため殆どリスクはない。
続く
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作者名:あああああ | 作成日時:2025年12月15日 8時


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