1話 目覚め ページ3
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薄暗い部屋──窓一つない狭苦しい空間にベッドと床頭台ひとつあるだけの部屋。
扉すらなく、出入り口には襤褸のカーテンがかかっているだけ。
床頭台の上に置かれたろうそくが起き上がった少年の影を大きく映し出す。
Aは寝ぼけ眼を擦り、先程まで見ていた幸せな夢を反芻する。
今となってはあまり思い出せないが、見知らぬ男達にここへ連れて来られる前は裕福な暮らしをしていたらしい。
昔がどうであれ現状がこれではな、とAは自嘲気味に小さく息を吐いた。
かつては王子として愛され育っていたAという少年は、今や巨大な娼館で日々働いていた。
「おい、仕事だぞお前ら!さっさと起きて上へ行きなクソガキ共」
いつものように、いつもと同じ薄汚い男が酒に焼けた声を張り上げる。
ここで働いている従業員は大きく分けて2つ。
Aのようにお客を相手にする者達。
娼館を運営している者達。
前者は少年少女から成熟した大人の男女まで幅広い年齢層の者達が。
後者は暴力を生業としているいかつい男達が大半だが、女も数名いる。
毎朝怒鳴り込んでくる薄汚い男は無論後者───下っ端の下っ端だが───だ。
「おいA、お前最近客に対して態度が悪いそうじゃねえか!」
この娼館は都の裏通りにある大きな建物だ。
1階が受付になっておりやってきた客は従業員と共に、2階か3階の豪華で贅を尽くされた部屋に行く。
ここは地下1階、従業員達の住居エリアである。
初めて見たものは罪人を収容する場所か何かと勘違いしてしまいそうな程、劣悪な環境だ。
従業員の逃走を阻止するため、上へと続く階段は一つきりで、常に見張りが立っている。
長く働いているAは今更逃げることもしないだろう、とのことで彼は階段に一番近く、一番大きな部屋に、鉄格子も無しの特別待遇を受けている。
「……そんなことないですよ、僕はいつだって全身全霊で仕事させて頂いてるじゃありませんか」
唾を飛ばしながら怒鳴り込んできた男をゆるりと見上げ、眉一つ動かさずに淡々と答える。
事実、彼はある特異な体質からこの仕事に対して手を抜くということはあり得なかった。
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あああああ(プロフ) - kohakuさん» コメントありがとうございます!とっっっっっっっても嬉しいです!!!続きは鋭意執筆中ですのでもうしばらくお待ち頂けたら、と思います!あまり時間がかかり過ぎないよう頑張ります! (2021年3月25日 23時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
kohaku(プロフ) - とても素敵な物語に引き込まれました、続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 5df933aa41 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - 紅紫((うっせぇわさん» とても沢山のお褒めの言葉、ありがとうございます!これから続編へと入るのでこれからもどうか宜しくお願いします! (2021年3月15日 3時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
紅紫((うっせぇわ - なんて言ったらいいんでしょう。凄くこのお話の中に吸い込まれていって自分がそこにいるかのような…表現の仕方とか自分がしっかりとそこにいるような。これらをまとめて『GOD作品』と言う。辞書で調べて下さい。出てきます。 (2021年3月10日 21時) (レス) id: 37c73b0d69 (このIDを非表示/違反報告)
あああああ(プロフ) - wyさん» コメントありがとうございます!あまりにも嬉しくて手が震えてます…最近は更新頻度が落ちてきてますが、ちゃんと最後まで続けますのでこれからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 14時) (レス) id: 1513927827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああああ | 作成日時:2019年4月21日 20時