第四十六話 ページ2
「ごめんなさい、母さん」
「悪かったよ千紘」
船は波に揉まれ、フーシャ村はもう見えない。
けれど、私の機嫌は自分でも悪いと思うほど酷かった。
『私が怒っているのは、絮安が勝手にエース君についていこうとしていたからじゃあありません。こんな騙し討ちみたいな方法で連れてこられたから怒ってるんです』
「だ…だって、行きたいって言ったら怒られると思ったんだもん」
『ちゃんと話してくれれば、無駄に怒ったりしません。そこまで感情的な人間ではないです』
「まァまァ、ジョジョも反省してるみてェだし、んな怒んなよ(敬語の千紘怖ェ…)」
エース君にそう言われ、涙目の絮安になんだか毒気が抜けてきた。
もうここまで来ちゃったし、いつまでも怒っていても仕方ないよね。
『わかった。でもこれからは、何かするならちゃんと言ってね』
「うん、わかったよ母さん」
落ち着いてため息をつくと、ほとんどの物を忘れている事に気が付いた。
このまま来ちゃったから、何も持ってきていないのは当然なんだけど……。
『私、何も持ってきてない…』
「大丈夫だよ。僕が持ってきといたから!」
そう言いながら、絮安は大きな鞄を取り出した。
用意周到だ……いったい誰に似たんだろう。
「ちゃんと、母さんが大事にしてるこの帽子もあるよ」
『うん、ありがとう絮安』
「それ帽子なのか?破けてねェ?」
『ところがどっこい、かぶると髪と同化する摩訶不思議な帽子なのです』
試しに絮安にかぶせてみると、まだまだサイズは合っていないけど、赤い髪とところどころ合体している。
『ね?』
「……ぜってェ繋ぎ目おかしいだろ」
「似合ってる?」
『うーん…もう少し大きくなったら似合うと思うよ。けど、今でも充分可愛いわ』
絮安は頬を赤くしながら笑顔になった。
今日も私の息子はとっても可愛いです。さすが髪以外は承君の遺伝子が受け継がれているだけある。
『エース君、これからどうするの?』
「そうだなァ……とりあえず、どっか別の島に行って仲間を捜すか」
『良い人が見つかるといいね』
「そうだな」
隣にエース君が立った。
いつの間にか身長も抜かされちゃったなぁ。今じゃ、私が見上げないと目が合わなくなっちゃったし。
承君は195cmもあったけれど、エース君はどこまで伸びるのかな。
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ナーガ(プロフ) - 輝夜さん» あたたかいコメントありがとうございます!頑張ります!! (2018年1月10日 18時) (レス) id: b1c1ba0bdd (このIDを非表示/違反報告)
輝夜(プロフ) - 続編おめでとう!これからも頑張って (2018年1月10日 18時) (レス) id: 51b7b5aab2 (このIDを非表示/違反報告)
ナーガ(プロフ) - 閻魔舞さん» ありがとうございます!なるべく早めに更新できるよう頑張りますね!! (2018年1月9日 18時) (レス) id: b1c1ba0bdd (このIDを非表示/違反報告)
閻魔舞(プロフ) - 後編おめでとうございます!これからも更新頑張ってくださいね、楽しみにしています! (2018年1月9日 18時) (レス) id: 4d46ad20fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナーガ | 作成日時:2018年1月9日 16時