ただ、君だけ。〈番外編〉(ymin)

＊ ページ29

「こら、その、おれ“なんか”っての、もう言わないで。
ずーっと、言おうと思ってたけどね。
伊野尾ちゃんは、大切な人なんだから。
たとえ伊野尾ちゃん自身でも、そんな風に言うのはだーめ」
「ッ……うん」


ああ、おれ、ほんとに幸せ。
おれのこと、おれ以上に大切に想ってくれてるの。
そんなの、ぜったい、この人だけだ。


ほっぺたをつまむのをやめて、再び頬に添えられた。
近づいてくるやまだの唇が、おでこに落とされる。
そして、左手を握られて、真剣な瞳で見つめられて。




「……伊野尾ちゃん、本当に、心から愛してる。
ただ、伊野尾ちゃんのことだけを。
これからもずっと、傍にいたい。
いてほしい。

この先何があっても、残りの人生全部、伊野尾ちゃんと、歩んでいきたい。

だから……伊野尾、慧さん。
俺と、永遠を誓ってくれませんか」




涙が溢れるのを、止められるわけがなかった。


ぽろぽろ、落ちていく、それは嬉しさから。


何も喋れなくて、ただただ右手で口元を覆って、やまだを見る。




「……あの……お返事、貰ってもいい？
一応……プロポーズっていうか、結婚は出来ないけど、その……決意表明っていうか……」


焦れたのか、返事を促されるけど。
分かってるくせに。
だって、顔がずっと、微笑みを浮かべてる。


「ッ、おれも、やまだ、だけ……！
ただ、やまだだけ、あいしてる……っ、だから、うんっ、ずっと、やまだといるよ……！
ちかう、誓い、ます……！」


１度、落ち着いて。
改めて言葉を紡ぐ。


「山田、涼介、さん……！
おれと一緒に、ずっと、一緒にいてくれる、って、誓ってくれ、ますか……？」


「……もちろん、誓います」


やまだからの、返事の言葉。
それと、握られていた左手が引き寄せられて、やまだの唇が触れた。


そこは、薬指の、うえ。


指輪はまた、用意するからって、言われた。


止まらない涙を拭ってくれるやまだの左手を取って、おれもお返しにキスをした。




もう、大丈夫。


やまだの優しさがぜんぶ、塗り替えてくれた。


包み込んでくれたから。


不安に思うことも、
怖いことも、
もう、何もない。


ただ、やまだのことを信じて。


ただ、やまだと、ずっと一緒に。









END.

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