＊ ページ4
「美味しかったね、ごちそうさま、やまだ」
「いやいや、よかったぁ気に入ってもらえて！」
「すごくいいお店だったよ！
さすが、王子様は違うね」
茶化すように言われて、笑いながら止めてくださいよ！とか言っちゃって。
そんな他愛ない話をしながら歩く。
あれからカフェを出た俺たちは、伊野尾ちゃん家に向かっていた。
やっぱり送り届けるまでが基本だよね。
「ってなんのだよ」
「やまだ？」
「や！何でもない！」
「ふーん……痛ッ……！」
よくわかんないセルフツッコミを入れてたら、伊野尾ちゃんが突然立ち止まった。
俺も合わせて立ち止まると、伊野尾ちゃんは目を押さえているみたいで。
「どうしたの？」
「んー、なんか目に入ったっぽい……まつげかな」
「まじ？見せて」
「うぇい」
変な返事(笑)
でもホントに痛そうなので、ちょっとごめんね、とメガネを外して見てあげる。
ムカつくことに伊野尾ちゃんのが背が高いから、頬を両手で挟んで軽く引き寄せてあげる。
「あー、ほんとだ、あんまり擦んないで、洗い流そう」
「や、たぶん……いける」
「あ、お、ちょ、取れそう」
何度か目をパチパチしたら上手く取れそうになったので、俺が指でさっと取ってあげた。
どう？と聞けば、また目を瞬かせる。
「あ、大丈夫」
「よかった」
「うん、ありが……わ」
「え……あ」
びっくりした。
気付かなかったけど、かなり距離が近くて。
こんな至近距離で人の顔見たことない。
つかそれ以上にメガネを外した伊野尾ちゃんを初めて見たわけで。
伊野尾ちゃんも俺との距離が近くてほんのり顔赤くなってる。
すげぇ、可愛いんだけど。
「あ……の、やま……」
「伊野尾ちゃん」
「ひゃいっ？」
「メガネ外してイメチェンしよう」
「えっ！？」
「その方が絶対可愛い」
「ほぁあっ！？」
「てか、ごめんね」
「ッ……、んッ……、んぁ……！！」
畳み掛けるように言って、我慢できなくて口を塞いだ。
伊野尾ちゃんが可愛いのが悪いからね。
「ん、は……や、やま……？」
「伊野尾ちゃんのせいだから」
「ふぇ……？」
「とりあえず、行こう」
「えええええ？」
何が起こってるか分かってない伊野尾ちゃんの手を引いて、強引に道を戻る。
ああ、そっか。
引っかかった理由はこれだったんだ。
掴んだ手を離したくないって思ってるのも全部。
そのまま連れてった美容室で、伊野尾ちゃんが茶髪のキノコ頭に変身して。
可愛すぎてその場で思わず告白した。
END.
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作者名：りりた
| 作成日時：2017年2月18日 13時
