生チョコタルト(hkin.INside) ページ21
※『トリュフ』の伊野尾視点です。
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「……伊野ちゃん何やってんの?」
「っほぇ!?」
「あ、ちょ、危な……」
「あーーーー!!」
ガッシャアアンッッ!!!
振り向いた瞬間に、腕に何かが当たって。
盛大な落下音。
ガランガランと転がるボウルとトレー。
見事にチョコレートを床にぶちまけてしまった。
「……ッ光のばか!!
なんで急に声かけてくんだよ!!!」
「いやいやいやこの時間に行くねって言ったじゃん!!
ピンポン鳴らしても出てくんないから合鍵で入ったんだよ!?」
うう……どうしよう……。
泣きそう、というか涙が溢れそうなのを必死でこらえる。
バレンタインのチョコというものを、慣れないながらも手作りしてみてたわけで。
そしたら突然光の声が聞こえて、びっくりして振り向いた時に、溶かしたチョコを入れていたボウルに腕が当たって、横に置いてたトレーと一緒に落ちちゃった。
どうしよう、というかもう光の来る時間だったんだ。
ほんとは、来る前に作り終えられるはずだった、チョコ。
イレギュラーに入った仕事のせいで、帰宅したのはさっきで。
作らないよりはと俺なりに頑張ってたけど、間に合わなかった……。
「伊野ちゃん、何かあった?」
「……今日、急に仕事入ったの。
午前中だけで終わるって言ってたのに、カメラ機材のトラブルとかで時間が押しまくって。
さっき、やっと作り始めた……」
光に説明しながら、途方にくれた。
こんな惨状じゃ、せっかく一緒に食べようって、作ってあげるねって約束してた光の手料理も、すぐに作れないよね……。
光だって、今日は生放送だったのに。
「……怒って、ごめん。
ピンポン気付かなくて、チョコも……ごめんね」
涙いっぱいに溜めたまんま、もう謝ることしかできない。
もう諦めて、これは全部片付けなきゃ……。
「俺も、連絡入れればよかったね。
ごめんね伊野ちゃん」
「ううん……」
「……チョコはもうないの?」
「まだ、ちょっと予備はあるけど……もうこんな時間だよ?」
「伊野ちゃんが晩飯遅くなっても大丈夫なら、これから一緒に作ろ」
びっくりして、思わず顔をあげた。
ウソ、そんな、光だって疲れてて……。
でも、俺のためにそう言ってくれる優しさが嬉しい。
「……いいの?」
「もちろん。
何作ろうとしてたの?」
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作者名:りりた | 作成日時:2017年2月14日 4時