St.Valentine 2017(jump×in) (ページ20)

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これ、と見せてきたレシピ本には、生チョコタルトの文字。
理由は？と聞けば、生放送光とやってるから、だって。
可愛い理由(笑)

「でも、さっきのでタルトのやつが……」

床に落ちたトレーの方には、市販のタルト生地が乗ってたみたいだ。
これでは使えない。

「そしたらさ、トリュフにしよう？」
「トリュフ？」
「うん、工程はちょこっと多くなるけど、美味しいし形もまるいからさ」

しゃがんだままの伊野ちゃんの視線に合わせるように、俺もしゃがんだ。
まるい？って、首をかしげる伊野ちゃん。
あれ、トリュフの由来知らないの？

「トリュフはね、きのこの方に形が似てるからトリュフなんだよ？
伊野ちゃんそっくりでしょ？(笑)」
「なにそれ！」

ちょっとバカにしてる？って、涙は引っ込んで笑いながらぽこん、って殴ってきた。
ふふ、でも似てるんだよトリュフ。

「それだけじゃなくて、食べたらやわらかくてとろける感じも、伊野ちゃんでしょ？」
「は……ッ！？」

甘い言葉を囁いてみたら、伊野ちゃんがかたまった。
あれ、変だった？
でも次の瞬間真っ赤になって。

「口説きますでは口説けないくせになんでこんな時だけカッコつけんの！」
「伊野ちゃんはべーつ♡」

ほら、やろ？ってまだしゃがんだままの伊野ちゃんに、先に立ち上がって手を差し出せば。
その手をぎゅっと掴んでくれた。
小さく、ありがと、という声も。

そうそう、チョコが固まる前に掃除もしなきゃだね。
伊野ちゃんにチョコを刻んでもらってる間に掃除してあげよう。
形は一緒に作って、チョコを冷やしてる間にパパッと晩飯作って食べよ。

そのあとは。

とろけるくらい、甘い時間を過ごそう。

END.