トリュフ(hkin.HKside) ページ19
※『生チョコタルト』の八乙女視点です。
ーーーーーーーーー
「……伊野ちゃん何やってんの？」
「っほぇ！？」
「あ、ちょ、危な……」
「あーーーー！！」
ガッシャアアンッッ！！！
盛大な落下音。
ガランガランと転がるボウルとトレー。
見事に食材……というかチョコレートが床にぶちまけられた。
「……ッ光のばか！！
なんで急に声かけてくんだよ！！！」
「いやいやいやこの時間に行くねって言ったじゃん！！
ピンポン鳴らしても出てくんないから合鍵で入ったんだよ！？」
うう……どうしよう……と唸ってる伊野ちゃんは、ちょっと、いやかなり涙目だ。
どうやらバレンタインのチョコを手作りしてくれてたみたいなんだけど。
俺が声をかけたら、びっくりして振り向いた時に、溶かしたチョコを入れていたボウルに腕が当たって、横に置いてたトレーと一緒に落ちてしまったのだ。
いや、声かけた俺も悪いけど、何で今作ってるんだろう？
もう晩飯の時間だし、その飯は俺が作るってなってて、伊野ちゃんは光が来る前にチョコ作ってやるんだ！って意気込んでたのに。
「伊野ちゃん、何かあった？」
「……今日、急に仕事入ったの。
午前中だけで終わるって言ってたのに、カメラ機材のトラブルとかで時間が押しまくって。
さっき、やっと作り始めた……」
転がったままのボウルの前に座り込んで言う伊野ちゃんが、見るからに落ち込んでる。
オフに突然の仕事は、かなり精神的にやられる。
しかも押しまくりでこんな時間までとか……それでも、俺のために、チョコを作ってくれようとしてたのか。
「……怒って、ごめん。
ピンポン気付かなくて、チョコも……ごめんね」
涙いっぱいに溜めたまんま、そんな風に謝られたら。
どうにかしてあげたくなるもので。
「俺も、連絡入れればよかったね。
ごめんね伊野ちゃん」
「ううん……」
「……チョコはもうないの？」
「まだ、ちょっと予備はあるけど……もうこんな時間だよ？」
「伊野ちゃんが晩飯遅くなっても大丈夫なら、これから一緒に作ろ」
沈んで俯いてた顔があがって、びっくりした顔。
自分の荷物を置いて、手を洗って。
「……いいの？」
「もちろん。
何作ろうとしてたの？」
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作者名：りりた
| 作成日時：2017年2月14日 4時
