ただ、君だけ。〈１〉(ymin)

＊ ページ22

「伊野尾ちゃんのこと、前から様子が変だと思ってた。
キョロキョロして、集中できてないの、何か理由あるんじゃないのかなって思ってたのに、聞かなかった。
先週明らかにおかしかったのに、体調悪いんだって、きっとそうだって自己完結した。
伊野尾ちゃんも隠してるのが分かって、俺には言いたくねぇんだなって。
でも、こんなことならちゃんと聞いとけば良かったって、今、すごく後悔してる……」


山田の言葉はまっすぐで、正直な気持ちを伝えてくれてるんだってよく分かる。
でも、俺は山田の顔を見れなくて、俯いたまま止まらない涙を拭いつつ手元のマグカップを見つめるだけで。


そっか。
全部バレてたんだね。
ごめんね、全部俺が悪いの。
こんなことになって、結局こうして、山田に迷惑かけてる。
何がなんでも隠し通さなきゃいけなかったのに。
自分が許せない。


「……やまだのっ、せい、じゃないよ……。
俺が、解決しなきゃ、いけなかったのに……。
むしろ、皆を……っ……巻き込んじゃって……け、警察沙汰、なんて、本当にごめっ……」
「そんな……だから謝らないで。
伊野尾ちゃんのせいなんかじゃないよ。
俺たちが……」
「ううん。俺が悪いんだよ……俺が……」
「伊野尾ちゃん……」


俺にあるのはメンバーに対しての謝罪の気持ちだけ。
俺のせいでごめんっていうこと。
自分が許せなくて、大嫌い。
皆に会わす顔ない。
消えてしまいたくなる。


「とりあえず……目が覚めて、よかった！
あ、明日伊野尾ちゃんはオフになったからね。
電話すれば俺もオフにして貰えるんだけど、伊野尾ちゃんの家に泊まってもいいかな？」
「え……そんな、やまだにこれ以上迷惑……」
「迷惑じゃないよ。
むしろ、1日ゆっくりできるの久しぶりだし。
こうして伊野尾ちゃんと2人なんてほとんどないじゃん？
だから、たまには一緒にいてもいい？」


隣に座る山田の、思いがけない申し出に顔をあげた。
びっくりで涙が止まる。


「てかもう一緒にいるから。
マネージャーに電話入れてくるね」


マグカップを机に置いて、山田が廊下へ出てった。
本当に電話する気なんだ。
さっきまで、本当に消えちゃいたいと思ったのに。
山田がそんな風に言ってくれて、甘えていいのかなって、思ってしまった。

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