＊ ページ39
「救急車きました！」
「道開けてください！」
「山田さん、離れて！」
伊野尾ちゃんしか見えなくて、周りが何を言ってるかなんて聞いてなかった。
伊野尾ちゃんから離れたくなかった。
「おい、山田！！」
ぐい、と勢いよく身体を引かれて、我に返った。
救命士が着いても退かなかった俺を、ヒカが無理矢理引っ張ったのだ。
「っ、ヒカ、」
「伊野ちゃんのことが心配なのは皆同じだから、今は早く病院連れてかなきゃだろ！」
「ッ……」
「涼介、一緒に救急車乗りな」
呆然とする俺に、知念が同乗することを勧めた。
他のメンバーの顔を見渡せば、みんなが頷いてくれた。
「俺らもすぐ行くから、伊野尾を頼む」
薮ちゃんに言われ、俺は強く首を縦に振った。
こうして病院へと運ばれた伊野尾ちゃんは、今応急処置が終わって病室へと移されていた。
病室には、ベッド脇に腰掛ける俺の他にも、後から着いたメンバーとマネージャーがいる。
空気は当然重い。
診断結果を伝え終えた医者が病室から去っても、直ぐに口を開く人はいなかった。
暫く経ってようやく、マネージャーが事務所に連絡を入れるために病室から去った。
今日の仕事は終わりで、メンバーも帰宅していいことになったが、誰一人その場からは動けずに。
音のない時間が過ぎていく。
「……クソッ……」
そんな沈黙を裂いたのは、舌打ちをしたヒカだった。
「……俺のせいだ……！！
収録前から体調悪そうなの気付いてたのに、ッ無理矢理でも止めればよかった……！！」
「やめろ光。
……お前だけじゃない」
俺もだ、と絞り出すように薮ちゃんが言う。
泣きそうなヒカと、ギリリ、と音がしそうなくらいに拳を握り締めている薮ちゃんの姿が、俺の心を更に抉る。
違うんだ、２人のせいじゃない。
言いたくても、声が出ない。
「２人だけじゃないよ。
みんな気付いてた、伊野ちゃんの様子が変だって。
でも伊野ちゃんって何も言わないじゃん。
声掛けたっていつもみたいに、なんでもないよっていなされちゃう。
伊野ちゃんの本音を引き出すのって、すごい難しいことだと思うよ、たぶん、この中の誰にも出来ない……」
「裕翔……」
ゆうてぃーの言う通りだと思った。
伊野尾ちゃんが本当はどう思ってるかなんて、分かるわけがなかった。
伊野尾ちゃん自身にしか、分からないことなんだ。
伊野尾ちゃんが言葉にするまで、俺は待たないといけなかったのに。
俺は、勝手に全部決めつけて、傷つけた。
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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