＊ ページ29
俺の手を剥がそうと踠く伊野尾ちゃん。
だけど、離す気はなかった。
誰かの家に行く？
誰の？
会ってどうすんだよ。
全部話すのか。
俺と過ごしたように誰かと過ごすのか。
その誰かの隣で笑うのかよ。
そんなの、ダメだ。
伊野尾ちゃんは、俺の……！
俺の……？
「あ……」
「っはな、して、離せってぇ……ッ！？」
力の差は歴然で、グイッと思い切り引き寄せると、伊野尾ちゃんは簡単に俺の腕の中へと飛び込んできた。
自分の肩に伊野尾ちゃんの頭を押し付けて、反対の腕を腰に回して抱き締める。
「……伊野尾ちゃん、ごめん。
今のは、俺の失言だった。
本当にごめん、だから……頼むから、ここに居て……」
「うっ、……うぅ〜……ッ、……っく……」
しばらく腕から逃れようと暴れた伊野尾ちゃんだったが、俺に離す気が無いと分かると、徐々に力を抜いてくれた。
縋り付く様に泣く姿に、胸が締め付けられる。
泣かせたのは俺だ。
俺が傷つけた。
伊野尾ちゃんを傷つけた。
伊野尾ちゃんは俺の、大事な人なのに。
俺は、自分の好きな人を傷つけたんだ……。
お互いに頭を冷やす時間が必要だった。
その日、伊野尾ちゃんは出て行きはしなかったが、お互いにほとんど何も言わず、片付けや風呂に入って、すぐ眠りについた。
俺が泊まりの仕事に行くまでの数日間も、ずっと気まずいまま、必要最低限の会話で過ごした。
このままではダメだ。
帰ったらもう１度、きちんと心から謝ろう。
仕事中も、伊野尾ちゃんが頭から離れなかった。
ずっと、伊野尾ちゃんのことばかり考えてた。
何でこんな時に泊まりなんだよ、ってイラつきもしたけど、自分の気持ちに向き合う時間にもなって。
伊野尾ちゃんが出て行こうとした時、俺は嫉妬したんだ。
あんなに笑顔が見たかったのは、好きだったからなんだ。
そんな自分がいることを自覚した。
許してくれとは言わない。
言えない。
けれどせめて、伊野尾ちゃんを支えたいって。
ちゃんと伝えよう。
仕事を終え、３日ぶりに伊野尾ちゃんが待つであろう自宅に帰る。
夜だというのに、電気がついていない。
嫌な予感がした。
「ただいま！
伊野尾ちゃん……？
伊野尾ちゃん！」
呼び掛けに応えは無い。
そこに、伊野尾ちゃんは居なかった。
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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