＊ ページ19
「っ、……」
お箸を持つ手が、震える。
口に届くギリギリで、止まってしまう。
どうしよう、怖い。
やまちゃん、やまちゃんどうしよう。
助けを求めるように、やまちゃんを見た。
やまちゃんは、おれを見て、ただ優しく微笑んでいた。
「大丈夫だよ。
伊野尾ちゃんを傷つけるものは、なにもないからね」
「……あ……」
怯えるおれに、やまちゃんの優しい声が、降り注いだ。
その瞬間、怖くて堪らなかった気持ちが、スっと消えていくような気がした。
震えが、少しずつ治まっていく。
大丈夫。
摘んだままだったじゃがいもを、ゆっくりと、口に運んだ。
ぱくん。
「っ、……！」
口の中に広がるのは、美味しさだけ。
痛くない。
苦くない。
「い、伊野尾ちゃん……どう……？」
「っ……おい、しい……」
「マジか！！」
やまちゃんが、満面の笑みを浮かべた。
よっしゃあ！って、ガッツポーズも小さくしてて。
そんなやまちゃんを他所に、おれは、美味しくて美味しくて、次々に肉じゃがに手を伸ばす。
食べながら、込み上げてくる涙を、必死に堪えた。
「うまぁ……っ、美味しい……！」
「お、俺も食べる！
……やべぇ超美味くね！？
伊野尾ちゃんすげぇわ！！」
「ち、ちが、やまちゃんの、味つけだもん、」
「作ったのは伊野尾ちゃんだよ？
俺はちょーっと手伝っただけ！」
笑うやまちゃんに、おれも笑みを返す。
肉じゃがばかりをばくばく食べるおれを見て、やまちゃんは、味噌汁も食べてよ！って、また笑った。
そうだった、お味噌汁。
忘れてた。
えへへ、ごめんごめん、って謝りながら、そのお椀に手を伸ばそうとして。
また、今度は、完全に身体が強張ってしまった。
……えっ？
自分でも、一瞬理由が分からなくて。
うん、上手く出来たわ、というやまちゃんの声を聞いて、そこでハッと気付いた。
お味噌汁、これは、全部やまちゃんが作ってくれた。
「ッ……」
「伊野尾ちゃん？」
「あ、ぅ、あ……」
作るとこ見てたじゃん。
何も入ってない。
分かってるでしょ、大丈夫。
肉じゃがだって大丈夫だったじゃん。
いや、でも、肉じゃがは、一緒に作って、だって、やまちゃんだよ？
大丈夫に決まってる。
だって、だってやまちゃんは、やまちゃんはおれを……！！
「……そっか」
「あッ、」
お椀を見つめたままのおれを見て、やまちゃんは察したらしい。
一言そう呟いた後で、おれのお椀を取って、１口飲んで見せた。
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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