＊ ページ16
「で？どうする？」
「……じゃあ、肉じゃがにする」
おかしなやり取りに笑ってから、ようやく買うものの話題に戻る。
おれが食べたいもの。
なんだろう、って考えて、出てきたものはそれだった。
食べたいものでもあるけどそれだけじゃなくて、おれが、作れるようになりたいもの。
「肉じゃが？」
「うん。
……初めてやまちゃんの家で食べた、やまちゃんの手料理……」
初めて食べた時を思い出しながら、そう告げると。
やまちゃんが、すごく優しそうに、うれしそうに、はにかんだ。
わ、と思った。
なんか、わかんないけど。
息止まる、って思った。
鼓動が、急に早くなって、顔が赤くなっちゃう。
え、なんで、どうしよう、すごい、なんか。
なんでおれ、こんな……。
「ヤバい、マジか、嬉しいわ。
じゃあ、肉じゃがにしようか」
「……ぇ……あ、う……」
「……伊野尾ちゃん？」
「や、あ、なんでも、」
急に言葉に詰まったおれに、やまちゃんが不思議がって顔を覗き込んできた。
おれは直視出来なくて、思いっきり逸らしてしまう。
きっと、やまちゃんのあんな表情初めて見たから、びっくりしただけだ。
いきなり端正な顔が近くなったから。
綺麗な顔、迫ってきたから。
だから、ドキッとしちゃっただけだ、うん。
「？？？」
「ま、まずおにくだよね……！」
「え？あ、ちょ、待って！」
突然のおれの反応に戸惑うのも無理ない。
でも、ちょっと落ち着かなくて。
やまちゃんを置いてけぼりにしたまんま、お肉コーナーにずんずん向かっていった。
まあ、向かえたのはお肉のコーナーぐらいで。
あとどんな具材が入ってたんだろうかとか、そういうのは全然分かってなくて。
野菜とか何が入ってたっけ。
あ、じゃがいもだけは分かった。
おれがテキトーにばこばこカゴに入れてったら、やまちゃんがそれは違うよ！何に使うの！とかって怒るのが、おもしろかったりして。
だんだんと落ち着いてきて、そんなやり取りが新鮮ですごく、楽しくて。
また、こんな風に買い物とかしたい、なんて思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1415人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
