＊ ページ12
視線が定まらないのは、戸惑っているからだろう。
俺も俺で、何でこんなこと突然伝えてんのか、よく分からなくなりつつあったけれど。
でも、それがいいと思ったんだ。
俺が、今伊野尾ちゃんのために出来ること。
「もう１人で苦しまなくていい。
伊野尾ちゃんが、食べることをまた大好きになれるように、頑張るからさ」
「や、でも、」
「ね、さっきも言ったじゃん？
助けて欲しいことがあるなら、助けてって言っていいんだよ。
俺が出来ることなんて、これぐらいだけど……」
「……どうして……おれの、ために……」
「……理由って必要？
大事な、大好きなメンバーが、困ってる。
苦しんでる。
それを少しでも助けられるなら、助ける。
そこに理由って要るかな？」
「ッ、……」
伊野尾ちゃんが、言葉を失った。
本当は、理由なんて自分でも分からなかった。
ただ、助けたいと思ったから。
でも１番は、美味しそうに食べている時の伊野尾ちゃんの、笑顔が見たいから。
まだ躊躇う表情の伊野尾ちゃんに、今度は冗談を言うくらい明るく言う。
「これは俺の料理人魂にも火をつけたね。
絶対美味しいもの作るから、本気で期待してて」
「……料理人魂、って、アイドルでしょ本業」
「いやもうね、これは俺への挑戦と見たね。
だから伊野尾ちゃん、家に来いっ！」
「……ぷっ、……く、ふふ、何それ、やまちゃんってば、ほんとばか……」
伊野尾ちゃんの、俺の呼び名がやまちゃんになった時は。
咄嗟の時とか、気が緩んだ時とか。
たぶん、そんな時だけ。
自分じゃ気付いてないけど。
笑いながら涙を流してくれている、今が、そうなんだね。
「バカってヒドイじゃーん」
「ばかだもん、ほんと、っ、ばか……ぐすッ……」
「あはははっ、わっ！」
挟んでた頬をぷにゅっと押して、そうやって返したら、伊野尾ちゃんは余計にばかって言ってきて。
声出して笑ってたら、伊野尾ちゃんが突然、勢いよく抱き着いてきた。
首の後ろに回される腕と、震える華奢な身体。
肩に埋まる伊野尾ちゃんの綺麗な顔。
それと、小さな呟き。
「やまちゃん……たす、け、て……」
「…………うん」
やっと聞けた言葉に力強く頷いた。
ずっと、我慢してつらかったね。
これからは、一緒に頑張ろうね。
俺がついてるからね。
そんな想いを込めてぽんぽん、と頭を撫でれば、すり、と伊野尾ちゃんがより身体を擦り寄せてきた。
この人のために出来ることは、全部やる。
そう決めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1415人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
