第116話 ページ34
降谷side
松田は吸いかけのタバコを灰皿に叩いて灰を落とした。
チリっと変形して崩れていく。
タバコの先には白い煙が細く立ち上り、ふわりと空気中に溶けて霞んで消えていく。
自分は吸ってなどいないのに、なんだか胸の奥がグッと苦く感じられた。
「………四年前に、……ヒロがな」
小さく紡ぎ出した俺に、松田がわずかに顔を上げた。
「死んだことになったんだ」
訳がわからないだろう。そしてその詳細について俺は説明することもできない。
「生きてはいるんだろ?」
「あぁ。けど、戸籍では死んだことになって、今はもうずっとアメリカにいる」
「………そうか」
「今、諸伏景光って調べるとな、名前の下に【殉職】ってつくんだ」
そこから先は一思いだった。
この一連のヒロの話から俺が何を言いたいのかこいつに想像させるんじゃなくて、自分の言葉で言うべきだと思ったから。
「それで、俺たちが知る警官の中にもう1人それが着く奴がいる」
それを言い切ると、松田の動きがピタリと止まった。
「まさかっ」
「雪平の下にもある。何度見返しても変わらない」
「いつからだ」
「……3年前から」
「なっ!」
松田の顔色が見る見る血色を失っていく。
灰皿に沿わせたタバコが震えていた。
「なんで……何、が……」
混乱で言葉が出ない松田がやっとといった様子で右口角を吊り上げながら問う。
「それで雪平も今はアメリカとか言うんだろ?」
声色が震えていた。
俺は何かを言おうとして口を開く。
それと同時にポタリと生ぬるいような冷たいようなものが頰をかすってテーブルに落ちた。
喉がかぁっと熱くなって重いしこりのような物が気管を塞ぐ。声が出なかった。やるせなくて俯くと、視界に入った灰皿に、吸い殻が落っこちて白く細い煙を立ち上らせていた。
先がじんわりと赤く燃えてぐずぐずと黒くなって灰になる。
その様子がぼやぁと揺れてまた1つポタリと今度は下まつ毛に触れてポタッとテーブルに落ちた。
「それ、で?」
松田が絞り出したような掠れた声でこぼす。
言葉が出ない俺は熱い喉を掻き毟るようにして右手で喉仏を掴む。
「言えよ!!」
掴みかかって胸ぐらを引き上げられた時、ようやく気管に空気が通って、松田の青とかち合った。
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黒木(プロフ) - 架印靴気» 99話のアメリカとのクォーターとなっているのは夢主(来栖の設定)の方を指していたのですが、作者の力不足により誤解をお招きしたことお詫び申し上げます。改善をさせていただいたので、ご確認の方よろしくお願いいたします!報告ありがとうございます!! (2019年8月7日 20時) (レス) id: 0488b133c6 (このIDを非表示/違反報告)
架印(プロフ) - 99話に関してですが、世良さん含む赤井家3兄弟妹は、“イギリス”とのクォーターですっ! (2019年8月7日 19時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - くるクラさん» メッセージありがとうございます、頑張ります! (2019年7月17日 7時) (レス) id: 0488b133c6 (このIDを非表示/違反報告)
くるクラ(プロフ) - 初コメント失礼します。やっと降谷さんが同期組に会えた!!感激です!更新頑張ってください (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - 新玲乃音元iqqvyuuさん» 松田さん降谷さんにだけはどこそれ構わず喧嘩腰な気がするんですよね、安室さんではそれは買えないので、早くストッパー役の夢主ちゃんに出てきてもらわねば… (2019年7月16日 21時) (レス) id: 0488b133c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒木 | 作成日時:2019年6月25日 21時