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第261話 ページ2

「結論から言うと、あなたの体を元の健康体に戻せる薬を作るのは不可能に近いわ。体を強化する夢のような薬も」

そらそーよねーなんて他人事のように副音声が脳内再生される。


「せいぜい骨にいいもの食べて、筋肉で支えるしかないわ」

眉間に皺を寄せた灰原哀は苦いものを食べたような顔をしてきゅっと口を閉じる。

私たちの会話を聞いていた工藤もすっかり黙り込んで俯いていた。

「要するに薬の効果に体が追いついてないのよ。無理もないわ時間をかけて縮めているわけでもない、むしろ私たちになんの弊害も出ていないことの方がおかしいもの。もしかすると私たちもあなたと同じだけの時間が経てば異常が出てくるかも」

その言葉にはじかれたように顔を上げた工藤はふと視線を外してから左目を細めて呟く。

「あと2年か…」

2年で骨折するなら不調が出る前にはケリをつけなければならないなとでも思っているのだろう。

私は無性にタバコが吸いたくなって前歯の裏を舌先で擦りながらマと小さく音を出した。

「どうにもならないものは仕方ない。ありがとう、話に乗ってくれて。それから会ってくれたことも」

灰原哀はじっと私に視線を向けた。わずかに瞳が揺らいでいる。

「気負わなくていいわ。貴方のせいじゃないから」

ハッと瞳孔が小さくなって彼女の顔に影がかかる。工藤も動揺しているのが見て取れたが私が何か言うのを黙って待ってくれた。

「自分で首を突っ込んだことよ。ほんとに、ほんと。たまたまなんかじゃないのよ。だから何も気負うことはないわ、そしてこれを言うのは少し酷だけど待っていて。必ず薬のデータを手に入れてみせるから」

納得がいっていないのだろう俯く灰原哀は目を閉じて動かない。

「…貴女は私を恨んでる?」

「いいえ」

「嘘よ」

「いいえ」

「許せるはずないわ!!」

「いいえ」

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雪路(プロフ) - みおさん» みお様コメントありがとうございます!これからも好いていただけるよう頑張ります!ありがとうございます♪ (4月16日 14時) (レス) id: 3c2df6fdad (このIDを非表示/違反報告)
雪路(プロフ) - ルナさん» ルナ様コメントありがとうございます。こちらこそ閲覧いただきありがとうございます!!ありがたいお言葉励みになります。これからもAPTX4869をよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾ (4月16日 14時) (レス) id: 3c2df6fdad (このIDを非表示/違反報告)
雪路(プロフ) - 彩快さん» 彩快様コメントありがとうございます!初期から見てくださってるんですか!?嬉しいです。こんな遅筆な作品を読んでくださりありがとうございます。。楽しんでいただけたなら幸いです♪ (4月16日 14時) (レス) id: 3c2df6fdad (このIDを非表示/違反報告)
雪路(プロフ) - マニ。さん» マニ。様はじめまして!ありがとうございます(*´∇`*)折角のお誘いですが、あまりにもサイトを開くのが不定期のため、お返事をお待たせすることになってしまうボードは遠慮させていただきます。。お誘い嬉しかったです、今後ともAPTX4869をよろしくお願いします。 (4月16日 14時) (レス) @page32 id: 3c2df6fdad (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - とても好きな作品なので更新楽しみにしてます!! (4月12日 3時) (レス) id: 3cad66030e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪路 | 作成日時:2021年7月4日 20時

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