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「本当にすまなかった、うちの幹部が迷惑をかけた」

『まあ…状況が状況だったし、もういい、多少手荒な真似ではあったが』


引かれた手を振り払わず、話を聞いてみれば、我々国で指名手配されていた殺人鬼が我が国で目撃情報があったが、我が国ではそのような事件や被害もなかった。
その為に、我々国は我が国がその殺人鬼を擁護しているのではないか、という疑惑を向けたそうだ。
もしそうであるならば、グルッペンを餌にカマをかけるつもりだったらしい。


「トントン、何故お前が居ながらこんな事態になったんだ、それにオスマン、お前はいつもこんなあからさまな手段はとらないだろう」

「せやかて、グルッペンを利用しようとしとるんかと思ったんやもん…俺悪くないめう…」

「すみません、ほんま、もう、どうかしてたというか、ほんっとすみませんでした…」

「いやぁぴくとさん凄いっすね!全然動き見えませんでしたもん!」

「いやいや、ゾムさんも凄いですよ!」


結局、目撃情報自体が間違いであったことが判明した。
グルッペンが席を外していたのも、その確認に向かっていたからだそうだ。
土下座しそうなほど頭を下げている書記長の彼をひたすら宥め、なぜか護衛の1人と握手を交わすぴくとを横目に、グルッペンを餌にされたという、何とも言えない、複雑な心境を見つめた。


「…というか、何や、別に恋仲じゃないんやな」

『お前の国の外交官は皆こうなのか』

「いや、今日は虫の居所が悪いらしい」

「だって、この前いい感じに抜け出しよって、後始末どれだけ大変やったと思っとんねん…そのせいで毎回毎回外交の度にその話持ち出されて、俺は何で仕事中にまで知人の恋路の弁明しなあかんねん…!」

『…あぁ…』


堪らず口元に手を持ってき、顔をしかめた。
確かに、それは私の軽率な行動にも非がある気もする。
一言謝れば、別に怒っているわけでもない、と許しをもらい、今回の件で全て白紙に戻すといことで片付いた。
その後、貿易での軍需品の輸入輸出は行わないことと、鉱石類の輸出に関してを講義した。
今までの貿易は殆ど軍事関連のものでしか行っていなかったので、豊作である我々国とは、食物資の交易が主になるだろう、という結果になった。


『では、また』

「ああ、次会う時を楽しみにしている」

『その時までに、グルッペン、お前が死んでいないことを願うよ』

「心外だな」

『生憎、軍国には優しくないからな』


夕陽と彼を背にして馬車に乗った。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年8月9日 12時

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