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「我々国から外交の申し出が来てたけど」
『…またか』
軽くため息をつけば、ぴくとは苦笑いを零した。
彼らの条約締結を拒否した日から、やけに彼らからの外交の申し出が殺到している。
やはり、多少の提案もこちらから無しに、あちらの提案を完全否定するのは不味かったのだろうか。
頭を捻るが、彼らの提案はいつも同じようなもので。
どうにかして我が国を手の届く、所謂保護のできる範囲に置いておきたいようだった。
『その外交は断れ、他に用がある』
「…意外だね、嫌ってるものだと思ってたけど」
『嫌って何か変わればの話だ、無駄な抵抗だと私だってわかっているからな、それに、大方あちらの要求は何となく察せる』
「え、もう？手紙にはそんなこと、一言だって…」
『あの国だって、奇怪なだけで馬鹿なわけじゃない、要求を明らかにして、手の内明かすような真似をするとは思っていない、それに、そいつは前のパーティーにも出席していた、こちらからの誘いではなく、お得意様のペットとしてだが』
「外堀が埋められるのも時間の問題なのか…」
誰もが、守られることに幸福を抱くわけじゃない。
ただ、無抵抗に攻めるしかないのだ。
それに、外堀を埋められたのなら、それをまた掘り返してやれば良い。
策がないわけじゃない。
命というものは、儚くも、こうも心強くある。
彼らの最大の武器が軍事力であるならば、私達の武器は、何処までも平和を求める強欲さと、誰もが認めるこの無力さだ。
『さて、長々と籠るのはもう終わりだ、我々国には外交内容を外交官を通して行うと伝えろ』
「…護衛は」
『必要ない』
「…」
『不服そうだな、私からの最大の妥協でお前も連れて行くんだぞ』
「…それって」
『お前を護衛として連れて行く、あちらには我が国の書記長として紹介するがな』
餌を貰い、かつまだ待てをされた犬のように、目の前の状況に目を輝かせるぴくとは、嬉しそうに隠す武器を選び出した。
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年8月9日 12時
