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「久しぶりね、A」

『…お久しぶりです、お姉様』

「あら、嫌ね、もう昔の躾を忘れたのかしら、エリナお姉様とお呼びなさいな、それとも、もう一度躾直してあげたほうがよろしいのかしら」

『結構です、それで、ご用件は』

「!…釣れない子、昔から何も変わっちゃいないのね、お父様も、こんな子に権力を与えるなんて、落ちたものね」


使用人が気を使い、防音の部屋に姉と私を案内してくれた。
聞こえる呼吸の音に吐き気が込み上げてくる。
こんな狭い空間で、同じ空気を吸って、この女の体内で一度汚された空気を吸わなければいけないなんて。
彼女は使者がいないのをいいことに、ソファにどかりと座り、私を馬鹿にするかのような目でそう呟いた。


『あの方に気に入られようと必死だったのに、貴女は変わってしまわれたんですね』

「本当に、口が達者になったものね、勿論よ、あの人に気に入られなくたって、私には十分な権力もお金も従順な旦那様だっているのだもの、もう生きてすらもいない人間に、媚を売り飛ばしてなんの意味があるのかしら」


その勝ち誇ったかのような目。
私の食事に大量の薬を混ぜた時も、そんな顔で私が苦しむ姿を見ては愉快に笑っていた。
虫唾が走る、この人との会話は苦痛でしかない。
甲高い声で聞かされる自慢話は、いつも、何とも呆れるほどに他者に依存している様を滑稽にも誇っているようにしか見えなくて。


『貴女の自慢話はもう聞き飽きたんです、手短に要件をお話しください』

「私の旦那が、この国の脅威が消えたからと外交を申し込んでるみたいなのだけど、ちっとも受け入れないとお怒りだったの、その理由を、貴女の間抜け面を見るついでに、聞いてきて差し上げようと思ったの」

『それはご苦労様です、ですが、生憎話すことは何もありません、貴国とは話す価値もない、それだけのことですので』

「なっ、貴女、黙ってれば言いたい放題…!礼儀というものが本当にないのね!」


私の強気な態度がさぞ気に喰わないのだろう。
随分頭に血が昇っているようで、顔が真っ赤だ。
本当に変わってしまった。
この人が、誰かの為に怒りを表すなんて。
いや、誰かの為なんかじゃなく、自分の所有物が高価でありながらも、価値もわからない私なんかに、否定をされたからだろう。
貴女はそうやって、いつまでも誰かに依存して生きていくのですね。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年8月9日 12時

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