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ち「それで、文庫本見るでしょ？本屋さんの…棚の中じゃなくて、棚の前の台みたいなとこに、並べて置いてるとこ、あるでしょ？」
「あー、はいはい」
ち「そこから一冊とって、パラパラってして、面白そうかなって考えて、ちょっと違うなって戻すでしょ？
その日もそういうことしてて、元の位置に戻そうとしたら…違う本が置いてあるの。恋愛小説が」
…ん？
ミステリ小説を場所に戻そうとしたら、そこに別の恋愛小説が置いてあったということだろうか。
ち「おかしいなと思って。だけど、そういうことが何度かあったの。
私が本を戻そうとすると、そこには恋愛小説があって。そうするとタイトルが目に入るでしょ？
"あなたを見つめ続けて" "愛に気づけない人" "ささやきが心に届く時"
そういう感じだったかなぁ」
「へぇ、そんなことがあったんだ？」
ち「あったんだよね。だから私実験してみたの。
ミステリ小説を読んでるフリしながら自分の周りにすごい気をつけてみたんだ。
そしたら…誰かが私の後ろにそっと忍び寄ってきて…」
何それ怖い。
私はもはや、完全にちったんの話に耳を傾けていた。
ち「ササッと置いたんだよね。恋愛小説を。私がミステリ小説を戻す位置に…」
「もしかして、それ」
ち「うん。そうなの。つまり私へのメッセージってこと」
ちったんが、真剣な声で深く頷く。
ち「その恋愛小説を読んで欲しいっていうことなのか、タイトルを気にして欲しいってことなのか……
とにかく、彼からのメッセージなんだよね」
「頑張るねぇ、彼」
待て、店員。そこは絶対感心するところじゃない。
恋バナかと思っていたら段々ホラーになってきている。さっきから私の鳥肌も止まる様子がない。
ち「ホント、頑張るよね。辛抱強いっていうか、粘り強いっていうか…
いつも付け回されて、ちょっとうんざりだったんだけど、でもさぁしょっぴー。考えてみたら、自分のことをそんなに好きでいてくれる人って、滅多にいないよね？」
えっ？
「そうかもしれないねぇ」
ちょ、いや、なに同意してんの？この店員。
ち「別に危害を加えられてるわけじゃないし…」
「うんうん」
待て待て。危害を加えられてからでは遅いのであって…
ち「部屋を盗聴されているのは、ちょっとどうかなと思うけど」
「あ〜ね、」
あ〜ね、とは？
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作者名：みたらし | 作成日時：2023年8月8日 19時
